最近なんとなく思うのは「政治家にわかりやすい言葉は必要なのか」ということだ。わかりやすさは「善」なのだろうけども、政治家にかぎって言えばちょっと怪しいと思いはじめた。
直近で言うなら丸山和也議員の「奴隷」発言である。丸山議員は17日の参院憲法審査会で、「いまアメリカは黒人が大統領になっているんですよ。黒人の血を引くね。これは奴隷ですよ」と発言した(CNN・2月19日)
■国会では謎の"クイズ&フリップ"がブームに?
このあとCNNの取材に答えた丸山議員は、「発言に人種差別的な意図はなく、人種差別を乗り越えた米国の偉大さに言及しようとするものだった」と説明している。たぶん主旨はそうなのだろう。行間はそうなのだろう。
「行間を読む」ことは大切なことだ。情報を楽しむために「行間を味わう」ことはもっとも大事な受け身の取り方だと私は思っている。大人のたしなみかもしれない、とも。でも政治家だけは行間を期待してはいけないと思う。その発言は容赦なく直訳されて世界に拡散される職業だからだ。
実は、私が丸山発言で気になったのは同じ日の「日本が米国の51番目の州になることに、憲法上どのような問題があるのか」である。そうなれば集団的自衛権も関係ないし拉致問題も起こっていないという問題提起である。すごくわかりやすい。すごく挑発的で、場所によっては賛否が盛り上がるお題かもしれないと思った。
でもこのお題はそんなに響かなかった。たぶん国会だからだ。テレビ番組ではないからだ。私が「場所によってはすごく賛否が盛り上がる」といま書いたのは、そういえばテレビのワンシーンを浮かべたからだった。
丸山議員はテレビで活躍した人だ。『行列のできる法律相談所』ではわかりやすい言葉とリアクションで人気を博した。あえて「奴隷」という言葉を使って短く説明したのも、タレント時代の手法の延長だろう。でもそれは国会ではいらないのだ。
丸山議員だけではなく、気になるわかりやすさは他にもたくさんある。たとえば首相や大臣にクイズのような質問をする議員。あれも無駄。もっと「難しいこと」を聞いてほしい。だって国会なのだから。
そうそう、質問のときにバラエティで多用されるような大きなフリップを使うのが最近では当たり前になっているが、あれもやめてほしい。テレビ中継用なのだろうけど視聴者に媚びてるようでむず痒くなる。「わかりやすくしないと分からない人は放っておく」ぐらいの態度でいいと思う。だって国会なのだから。
私たちは、政治家のわかりやすさにはじゅうぶん気を付けなければいけない。本質が隠されるかもしれないし、時間の無駄だから。どうしてもやるというならドナルド・トランプ氏ぐらいの「確信犯的なわかりやすさ」まで腹をくくってやってほしい。わかりやすく書いてみたつもりです。
Written by プチ鹿島
photo by 丸山和也の毒舌国会
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