プチ鹿島の「余計な下世話」

「安倍首相発」の被災報道の謎|プチ鹿島

2018年09月11日 北海道 地震 安倍首相発 官房長官 自民党 被災報道

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 日曜日の『毎日新聞』一面にこんな記事がありました。

『北海道地震 「犠牲者」政府先行発表で混乱 官邸主導をアピール?』(9月9日)

 読んでみるといくつか気になる部分があった。
 まず冒頭。

《今回の地震では、安倍晋三首相や菅義偉官房長官が犠牲者数をいち早く発表している。国の発表は警察や自治体より遅れることが多く、政府の先行発表は異例だ》

 確かに今回の地震では安倍首相「発」の発表をよく目にします。まさに首相自らが先頭に立っている感ある。
 こうなると伝える側によっては、

『北海道の地震 16人死亡 26人不明 安倍首相』(9月7日 NHK NWES WEB)

 という妙な表現にもなる。
 安倍首相の名前を入れて報道することに対し「なんでNHKはわざわざ入れるのだ」「忖度か」というツッコミもSNSにある。私が思うにNHKはそこまでの意図はなく、「いつ」「どこで」「誰が」の「誰」の部分を忠実にやったらこういう妙なタイトルになったのではないか。お役所仕事の最高峰というか、AIみたいなものである。

 それより『毎日新聞』の記事で最も気になったのは次の部分だ。

《首相が発言した情報が不正確で官房長官が謝罪する事態も招いている》

 あー。
 先頭に立って首相自ら発表したのはいいが、情報が間違っていたこともあったというのだ。
 子どもの頃、慣れないことをやって失敗すると「ほーら、言わんこっちゃない」と親に言われたことを思い出した。
 ではなぜこんなことを? 記事の最後はこうだ。

《政府関係者は「今回は自民党総裁選もにらみ、危機管理態勢の充実ぶりをアピールする狙いもあったかもしれない」と指摘する》

 総裁選のアピール......。

 確かに新聞各紙を読んでいるとここ数日は首相陣営の「対・総裁選」表現がよく目につく。

『災害対応をしている姿を見せられるから、現職には有利だ』(朝日新聞9月8日)
『災害対応が一番の総裁選活動だ』(毎日新聞9月7日)

 これらの言葉がよく出てくる。
 もちろん、安倍首相の言う『現職の総理大臣なので国民の命と暮らしを守ることを優先するのは当然だ』(読売新聞9月8日)が目的だろうが、さらに気になる言葉もあった。7~9日に予定していた総裁選の候補者による討論会やテレビ出演が地震対応で先送りされたのは、
《首相陣営にとって「不謹慎だが、選挙戦にはプラスになった」(閣僚経験者)》(産経新聞9月7日)
というのである。

 こういうこと、ホントに言うんだ。

 安倍首相が前面に出て犠牲者を発表するものひとつの「政策」だろう。しかし、政治は結果なら慣れないことをした結果として間違いが起きているというなら疑問だ。
 今回の行動は総裁選のアピールらしいが、私にはもう一つの理由が浮かぶ。

「赤坂自民亭」である。

 あのときの批判、よっぽどダメージがあったのではないか。
 赤坂自民亭は今年のキーワードのひとつだと思う。(文◎プチ鹿島 連載『余計な下世話』)

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