エリカちゃん公式ツイッターより
今年の北方領土の日。翌日の新聞見出しは異変を伝えた。
『北方領土の日、配慮前面に 「不法占拠」「四島」言及避ける』(日経2月8日)
《平和条約交渉を進めるにあたり、ロシア側を刺激しないようにとの配慮を前面に出した。》(同)
なぜこうなったのか? ヒントは年明け早々の読売新聞(1月4日)にあった。
《6月に日本で初めて開かれる大阪での主要20か国・地域(G20)首脳会議に合わせて来日するプーチン氏との間で、北方領土の問題解決に向けた大筋合意を目指す。》
参考記事:北方領土問題が解決して二島が日本へ返還されたらどうなるか そこに住む人々はそれで納得なのか
しかもそのG20の日程は参院選の前に変更してもらったと読売は書いた。「全ては参院選を前に見せ場を作るためだ」という首相周辺のコメントも。北方領領土で「成果」を発表して選挙に突入というシナリオなのだ。
だから今年はロシアに「配慮」した。しかし北方領土を選挙に絡めちゃっていいのだろうか。自ら期限を切った交渉は相手に足元を見られるだけではないだろうか?
1年前、私はラジオ番組であるキャラクターを紹介した。「北方領土エリカちゃん」である。
エリカちゃんは「北方領土問題対策協会」(内閣府所管の独立行政法人)が、SNSで情報を分かりやすく発信するために制作したキャラである。エリカちゃんは女の子で、口癖は「ピィ」である。
その売りは「直球」。昨年の北方領土の日、産経はエリカちゃんを次のように紹介している。
《2015年2月につぶやかれた以下のツイートがインターネット上で話題になったので、覚えている人もいるのでは。
「北方領土に関するクイズを出すピィ~♪ まずは初級編だピ! 【第1問】北方領土を不法に占拠しているのはどの国でしょう?」
見た目や言葉遣いのかわいらしさと、"直球"の設問とのギャップが話題を集め、リツイート(引用発信)数は3万を超えたのだ。》
さらにエリカちゃん自身は記事でこう語っていた。
「単なるゆるキャラではないピ。言うべきことは言っていくピィ」「硬軟織り交ぜた話題で、世代を超えて皆さんに北方領土問題に興味を持ってもらえるとうれしいピィ♪」(2018年2月7日産経ニュース)
参考記事:くまモン、生放送で「とんでもない悪意」をむき出しにしてバッシングの嵐 被害者は大ヤケドか?
あれから1年。
今年の北方領土の日。エリカちゃんはどんなツイートをしたのか?
結果は「ゼロ」だった......。エリカちゃんにとって一番気合が入るであろう日にツイートをしなかったのである。
もしかしたら北方領土の日はイベントで忙しいのかと思い、1年前の「2月7日」を確認してみた。
すると、ツイート数はなんと「24」。まんべんなくしていたではないか。当日の23時59分までつぶやいていた。
ちなみに昨年の北方領土の日に出題したクイズは、
「歯舞諸島、色丹島、国後島、択捉島からなる北方領土は、どこの国の領土でしょうピィ?」
「正解は、当然、日本の領土だピ」
そして「次のロシア語はなんという意味でしょうピ?」という問題では「北方四島は日本固有の領土です」とロシア語で出題。
「難しかったピ?」とフォローしているのだが、ロシアへの挑発ぶりはエリカちゃんここにあり、だった。
しかし、しかし、今年のツイートはゼロ......。
あれだけ強気だったエリカちゃん。「言うべきことは言っていくピィ」と語っていたエリカちゃん。
沈黙の北方領土の日の翌日、エリカちゃんはようやくツイート。
《平成31年北方領土返還要求全国大会が2月7日「北方領土の日」に、国立劇場で約1,800名の参加者を得て開催されたッピ。
安倍総理は、交渉を進展させるためには、政府と国民が一丸となって取り組むことが重要と挨拶されたピィー。
エリカも国民と共に返還要求運動に取組み、政府の交渉を後押しするピッ♪》(2月8日)
エリカちゃん、なんだよその堅苦しい口調は......。
エリカちゃん、またあのクイズを出してくれ。政治家にも出題してくれ。そして正解を言ってくれ。
「北方四島は日本固有の領土です」
お願いだ、エリカちゃんピィ! (文◎プチ鹿島 連載『余計な下世話』)
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