あもりの記事に乙武さんがアンサーをくれました。
あもりの記事
「キミは障害者で可哀想だね」と言われたい私のような障害者がいることも知ってほしい
乙武さんの記事
あもりさん、ごめんね。
あもりとしてもTABLOとしても、決して乙武さんに対してアンチテーゼを向けたわけではないし、答えをもらおうと思って掲載したわけではなかったんですが、こういうことが実現してしまうのだからネットは面白いなあと思いました。
そしてもうひとつ、私の中には今までなかった感情が起こりました。
2015年10月に欠損バーを立ち上げて2年が過ぎましたが、思い起こすと苦労の連続でした。
信頼していた人物にお金を持ち逃げされたり、お店を貸してくれる予定だった店主が「やっぱりお店に障害者を入れるのはどうかと思う」と急に断られたり、頼りにしていた人物の親が出てきて「息子とは絡まないでくれ」と言われたり、その彼は「障害者なんて大嫌いなんだよ!」と発言したり、いつも自分はひょうひょうとしているので周囲には分かりにくいかもしれませんが、悔しさの連続でした。
それでもここまでやってこれたのは、琴音ちゃんやあもりちゃんを始めとする欠損女子たちが真面目に働いてくれることや、それを見守ってくれるお客さんたちと、ずっと一緒に運営をしてくれた仲間がいたからです。
欠損バー立ち上げのきっかけをくれた琴音ちゃん
欠損バーはネット上でこう叩かれています。
「見世物小屋で金儲けしやがって!」
「障害者を働かせるとはいかがなものか!」
「気持ち悪い!」
「闇だ!」
私が欠損バーを始めたきっかけは、琴音ちゃんと出会ったからです。こんなに可愛い子が腕が無くなっても健気に生きてて、何かを一生懸命発信しようとしている。それを読者に伝えようとBLACKザ・タブーで記事にしました。それが大反響を呼び「彼女に会いたい」という意見が多く寄せられました。じゃあ、そういう機会を作ってみようかと考え、琴音ちゃんたちと相談して作ったのが欠損バーです。別にトークショーでも良かったんだけど、お酒を飲んでカウンター越しに話せた方が距離が近いじゃないですか。障害について聞きたいこと・話したいことを好きなように語り合ってもらう会、そんなつもりで立ち上げました。
ところが、私の予想を超えて、欠損バーは世間的に有名になってしまいました。新聞・テレビ・雑誌・ネットのメディアに取り上げられ、「がんばる障害者」という形で世の中に認知されていきました。
今、頭を痛めているのはココです。
私は今まで欠損バー関連では自分自身はあまり取材を受けないことにしていました。よく「岡本さんにも是非インタビューさせてください」と言って頂けるんですが、お断りさせてもらっています。理由は簡単で、私のことを「障害者のために仕事を作ったえらい人」と書こうとするからです。
少し遡りますが、ネットで「見世物小屋で金儲けしやがって!」と叩かれていると述べました。私、何度も言っています、「はいそうですよ」と。
やっていることは「見世物小屋」です。普段は真正面に見ることの出来ない"障害者"をみんな見にやってくるんです。そこに価値があると思って客はお金を落とします。障害を売りにして女の子たちは報酬を得ます。
女の子たちも、お客さんたちも、このシステムを充分に理解して成り立っています。ですからいくら叩かれようが私を攻撃しようが「はあ、そうですけど?」としか言えないんですよ。叩いている人は「空は青い!」「地球は丸い!」と言っているに過ぎないんです。
それに「闇だ」とか言ってるけど、障害者が働くことの何が闇なの? 欠損バーで働きたいって人もたくさんいるけど、それはそれで面接もあるし、第一接客が出来ないと採用しません。あとビジュアルも重要です。こんな一般と同じように厳しい世界で働いている彼女のたちのどこが闇で、どこが気持ち悪いのか説明してくれよ、おい。
で、取材してくださるメディアには、このことをちゃんと書いて下さいとお願いしています。
しかし、みなさん「お涙頂戴」風に書きたいんですよね。障害者が一生懸命頑張っているのがすごい! えらい! と書きたくてウズウズしているんです。私がいくら「これは『見世物小屋』でけっこうです」と言おうが、みなさん一度びっくりした顔をされてから笑顔を取り繕い「またまたぁ〜〜!(笑)」と言うばかり。私の言うことは決して聞き入れてくれません。フランスの通信社の日本版AFP通信さんだけは「ちゃんと書きます」とおっしゃってくれたので取材に応じたことはありますが。http://www.afpbb.com/articles/-/3136550
乙武さんに相談してみたいなあ......
これが冒頭に述べた「私の中には今までなかった感情」です。私は元来あまり人に相談というものをしません。自分が不安定になると欠損バーの運営にも支障をきたしますし、悩みや怒りはあるけれど、それは心の中にしまっていたりします。まあ、こういう人間なので、それがストレスになっているわけではありませんが。
ただ、今回の乙武さんの温かい言葉を読んで、ああ人に相談してみることもいいのかなあ...なんて思ってしまいました。
特にメディアに対して、私自身が怒っていることがたくさんあります。例えば、彼らが欠損女子たちをタダで取材しようとすることです。
何も大金を払え! と言っているわけではないんですよ。
「この日ここに来い」
「2時間くらい喋れ」
というのであれば、最低限交通費だけでも出ないんですか? と私は聞いています。これ、もしも本人たちが直接対応していたら、「断ったら何か書かれるかもしれないし怖い」と思いますよ。「はい分かりました」と言って自分たちで衣装や交通費を持ち出しで取材を受けることになると思います。それを避けるために私は存在しています。
今まで何も言わなくても、ちゃんと交通費とギャラを出してくれたのは、NHKさんとテレビ朝日さんと週刊ダイヤモンドさんだけでした。
「出たら宣伝になりますよ」とか「テレビなのに出なくていいんすか?」と言ってきたところは申し訳ないですが、お断りさせて頂きました。
障害者とか健常者とか関係ないと思うんですよ。人の時間をお借りするんですから、ほんと気持ちで構いませんから、本人たちに交通費ぐらいは出してあげて欲しいと思う私の気持ちは間違っていますでしょうか......?
こんなことを書いたのは初めてです。
なかなか人に言える内容ではないものですから。
ただ、乙武さんなら何てアドバイスをくれるのかな? と思ったんですね。
長文、失礼いたしました。
文◎岡本タブー郎
【関連記事】
●フジテレビの馬鹿ディレクターと喧嘩しながら観戦した障害者スポーツ大会について|岡本タブー郎・連載『ざわざわさせてやんよ!』第四回
●こぶしファクトリーから田口夏実が脱退して物思いに耽る|岡本タブー郎・連載『ざわざわさせてやんよ!』第三回
●「相撲ジャーナリスト」っていう得体のしれない人たちは一体何なんですか?|岡本タブー郎・連載『ざわざわさせてやんよ!』第二回