今でこそすっかり静かになってしまったが、一昔前の新宿歌舞伎町は世間一般の常識とは違う理(ことわり) で動いている街だった。 言ってみれば足の置き場を間違うと即座に爆発の起きる地雷原のようなものである。
『新宿歌舞伎町でカタギがヤクザを騙るとどうなる? by草下シンヤ』
http://tablo.jp/serialization/kusaka/news001323.html
この草下の歌舞伎町話は何事もなく過ぎた平和なケースだが、そこからほんの僅かでもパーツがずれるとこれほど酷い話になるという実例をご紹介しよう。
今から10年近く前、友人から妙な依頼が回ってきた。「歌舞伎町の風俗店が火薬庫みたいになってんだよ。ちょっと調べるの手伝ってくれない?」だそうだ。 歌舞伎町自体が火薬庫みたいなものなのに、その中でも特に危険な状況とはいったい......。
当時の私はとある探偵会社が運営している情報サイトのプロデューサーという立場にあった。 私自身は探偵としての訓練を受けたことなどないのだが、それでも変に目立つ肩書きがあると "この手の調べ事" が回ってきてしまう。この時も探偵事務所に正規の依頼を出したところ、とんでもない高値を吹っ掛けられ、「じゃあ個人で請けてくれるヤツを探そう」 という話になり、巡り巡って私にまで落ちてきたのである。
「歌舞伎町の風俗店で切った張ったの一大事!」 という、実に興味深い内容だったため、好奇心が抑えられずに依頼主に会ってみると、やって来たのは地味なスーツを来た小柄な男性(以下A氏)。だが眼光だけは妙に鋭く、待ち合わせ場所の風林会館パリジェンヌ(ベタ!) にぴったりなオーラをまとっていた。 挨拶もほどほどに、A氏はこう切り出した。
「つい先日、この辺りの風俗店に一斉にガサが入ったんです。 それでワシらが面倒みとる店が何軒もヤラれまして。 それについて少々調べていただきたいことがあるんです」
なんでも、区役所界隈から職安通りの方まで手広く摘発が入ったのに、妙な助かり方をした店がほんの僅かあったらしい。その助かった店に共通しているのは裏のオーナーが一緒ということ。
「実はその助かった店というのは、ワシらの組織から独立した男(以下B氏)が面倒みとるんです。Bが出て行く時に何軒か店を持って行きたいと相談されて、餞別として2~3軒譲ってやったんです。当然売上からいくばくかはこちらに入れるという約束で。そしたら今回のガサでBの店は助かって、ワシらの店だけキレイにヤラれたんです。おかしいでしょう?」
A氏いわく、同じ地域ないしは同じ風俗ビルの中にある自分達の店は軒並みヤラれたのに、B氏に譲った店にはガサ入れ自体がなかったのだとか。これがどうにも気になるので、B氏の身辺を調べたいそうなのだ。
「とりあえずBの身柄を押さえるよりも先に、Bの周囲にどんな人間がいるかを調べて欲しいんです。下手をすりゃ組織同士の話になりますので。Bの持っとる店と自宅の住所をお教えするので、そこに出入りする人間を男も女も全て写真か映像に収めてください」
そして始まった探偵のアルバイト。私を含めた数人が手分けをして複数の張り込み先にスタンバイし、店・マンション・ビルに入って行く人間をとにかく撮りまくる。そして集まった素材を見やすいように加工し、A氏に納品しておしまい。そこから先は何があったのか知りません。本当に知りません。興味もありません。
という訳で、突然の歌舞伎町を舞台にした探偵ごっこは無事にエンディングを迎えたのである。おしまい。
※ 上の文章と下の文章は一切関係ありません
大宇宙からのチャネリングで得た情報によると、風俗店というシノギを巡る騒動は常に発生し続けているそうで、中でも裏の人間が代わった際に揉めるケースが目立つのだという。同じ組織の中で配置が代わるだけならば特に問題はないのだが、確実に何か起きるのは「組織自体が代わった場合」だ。
例えば(い)という組織の人間が、面倒をみていた店を持ったまま(ろ)という組織に転職してしまう場合があり、そうしたケースでは組織同士の話が付いていないとあっという間に叩き合い、弾き合いになってしまう。
特に悪質なのは、裏稼業から足を洗いたいからと(い)を辞めたのに、そして(い)のシマから店まで分けてもらったのに、それを持って(ろ)に転職してしまった場合だ。これなど情をかけてもらって餞別まで受け取っているのに裏切るわけだから、金額の大小は関係なしに助からない。
しかも、売上欲しさなのかイタズラのつもりなのか知らないが、古巣である(い)の店の内部情報をS宿署やY谷署にタレ込み、しばらく営業できなくさせてしまうなどもってのほかである。 今考えても腑に落ちないのだが、ハナから戦争をおっ始める気でもないなら、絶対にこんな真似はしないはずだ。
どうしてこのような事態になったのか想像で話をすると、ちょうどこの何ヶ月か後に某大手組織のトップが代替わりするという大きな出来事があった。どうもそれに関係した政治的なゴタゴタの中で起きた一幕だったと考えると色々な点が線で繋がる。
当時はまだ跡目が誰になるか確定情報が出てなかった時期なので、下の連中の中に「どの派閥に付いたら勝てるかな~?」と考え、実際に動いてしまう野心高い人間がいたとしても不思議ではない。
私には全く関係のない話なのでこれ以上の情報は出て来ませんが、私が請けた探偵のアルバイトの何ヶ月か後に、歌舞伎町界隈の数店の風俗店が突然閉店し、すぐに店名を変えて再オープンするという出来事がありました。それこそ私が友人らと写真を撮りまくった風俗ビルにあった店だったような気がしないでもありませんが、今となっては詳細は忘れちゃいました♪(てへぺろ)
Written by 荒井禎雄
Photo by wikipediaより
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