水上集落は政府支援を受け、インフラが整備されている
東南アジア諸国連合(ASEAN)10か国制覇を目指すマニアックな旅行者にとって、鬼門となっているのが秘境ブルネイ・ダルサラームです。
人口は2015年時点で42万人足らず(外国人在留者含む)。石油・天然ガスの生産・輸出が主要産業で、とても豊かな国ではあるものの、厳格なイスラム教国家のため、国内での酒類販売が禁止されています。夜遊びも期待できません。私もそんなブルネイを後回しにしてきましたが、ようやく訪問し、ASEAN制覇に至りました。
日本からブルネイに行く場合、直行便がないため、隣国マレーシアを経由するのが一般的。マレーシアの首都クアラルンプールとブルネイの首都バンダル・スリ・ブガワン(BSB)を結ぶ路線には、フラッグキャリアのマレーシア航空やロイヤルブルネイ航空のほか、格安航空会社(LCC)エアアジアも就航しています。
日本人が同国に入国する場合、14日間以内の観光滞在であれば、査証(ビザ)が免除されます。このため、ASEAN内で見ると、ビザ取得を義務付けているミャンマーのような煩わしさはありません。
首都BSBで見逃せないのは、ブルネイを象徴する「カンポン・アイール」と呼ばれる水上集落です。老朽化した家屋も少なくないため、、一見するとスラムのようにも見えますが、発展途上国のそれとは似て非なるものです。ブルネイ政府が国家遺産として保護するため、電気や水道、通信といったインフラ整備を支援。学校や病院、警察署、消防署などもあり、現在も約3万人が住んでいるとされます。
不良ブルネイ人はマレー国境で酒盛り
BSBのスーパーマーケットやホテル、飲食店などでは酒類の販売が全面的に禁止されており、飲酒を楽しむことはできません。しかし、取材を進めると、酒好きのブルネイ人は、ブルネイのクアラ・ルラーという国境と接するマレーシア・サラワク州のリンバンという街に通っていることが分かりました。これは行くしかありません。
BSB中心部からは、タクシーで30分程度。バスで行くこともできます。ブルネイ側とマレーシア側に高速道路料金所のような国境検問所が設置されており、旅券(パスポート)を提示すると、車で直接入国することができます。
国境付近には、酒を提供する食堂が数軒と酒類メインの免税店が1軒。食堂では昼間から、不良ブルネイ人らが酔っ払っております。私もブルネイで禁酒していた分、食堂で飲んだビールはことさらおいしく感じました。
タクシー運転手のフランシスさんによると、BSB中心部の「パームガーデンホテル」内には違法の"闇バー"もあるとのことで、夜が更けるのを待って潜入! 例えるならば、欧米の田舎町にありそうな野暮ったいダーツバーです。
酒の値段は、カールスバーグとタイガーの350ミリリットル缶がそれぞれ5ブルネイドル(約420円)。ボッたくり価格ですが、ここでは従うしかありません。
カウンター席に座ると、向かいにはタバコを吸いながらビールを飲むブルネイ人男3人組。その鋭い目つきと悪そうな人相はどこからどう見ても堅気ではなく、ブルネイの裏社会で暗躍するマフィアか何かだろうと推測。どうにも落ち着かないので、2缶飲んで撤退しました。ちなみに、同国ではタバコの販売も禁止されています。
フランシスさんによると、国内に風俗店はないものの、実はコールサービスがあり、ベトナムやフィリピンから出稼ぎに来た女がひっそりと春をひさいでいるのだとか。ブルネイの闇も意外と深そうです。
マレーシア国境の食堂で昼間から酒盛りするブルネイ人ら
ブルネイの闇バー。違法営業なだけあり客層は悪い
取材・文◎新羽七助
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