都内の家電量販店においてヘッドフォンやゲームソフトなど3点(合計45,530円)を万引きして起訴された東京都内の無職男性(51)に対して、東京地裁立川支部は「NCSEの症状により、善悪の判断に基づいて行動を制御する能力を欠いていた疑いが払拭できない」として無罪判決(求刑・懲役1年10カ月)を言い渡した。
●実際の現場でも犯行時の記憶がないと言い訳する被疑者は多い
「NCSE」とは、全身のけいれんを伴わないてんかん発作が持続あるいは反復する重篤な状態のことで、失語症や認知症、凝視、咀嚼・瞬目・嚥下運動の反復などのほか、自動症(無意識状態で行動すること)や認知症など様々な高次脳機能障害を呈するという。最悪の場合は、昏睡状態に陥り、心肺停止による突然死に至ることもあるというから比較的重い病気といえるだろう。
無罪判決を言い渡された男性は、判決後に「当時は、宙に浮いて意識がもうろうとしている状態で、防犯カメラの画像をみて、初めて自分の行為を思い出した。店に迷惑をかけたことは間違いないので、これからしっかりと治療して社会復帰したいと思う」と話していた。無意識状態での犯行だというのに、防犯カメラの映像をみて自分の行動を思い出せたところに大きな違和感を覚えると同時に、比較的高額で転売しやすい商品を複数盗んでいる事実に明確な悪意を感じる。
ついつい詐病を疑いたくなってしまう話であるが、てんかんは大脳の神経細胞の異常放電により発作を繰り返す病気で、発作時に脳波を測定すると特有の波形を示すというから詐病の可能性はないという。しかし、犯行時に発症していたかは本人のみしか知る由はなく、男性の主張を全面的に認める形で無罪判決を下したことには疑問が残る。
実際の現場においても犯行時の記憶がないと言い訳する被疑者は多く、突然にボケはじめたり、その場で死んだふりをする者まで存在している。どうみても健康そうな女性万引き犯に、うつ病や摂食障害を患っていると主張される機会も増えた。病気であることを主張して同情を誘い、警察への通報を免れようとするのだ。
この男性も同様だというわけではないが、完治するまで病院に隔離するなど、治療を義務付けて具体的な観護措置を講ずるべきではないだろうか。そもそも病気の影響で盗みを働くという言い訳自体が理解不能で、犯行時にみせる悪意に満ち溢れた彼らの目をみれば同情の余地はないのである。「NCSE」は治療可能な病気だというので、しっかりと治していただき、この男性が再犯に至ることなく人生を全うされることを願いたい。
Written by 伊東ゆう
Photo by Syahmir
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