イチロー三度目の国民栄誉賞辞退の理由は王貞治氏への想いか 「王監督の品格は僕には絶対ないもの」
『イチロー引退記念号』(サンケイスポーツ特別版)より
引退会見をしたイチロー選手が国民栄誉賞を三回辞退しました。現役時代に二回、引退会見をしてから一回。メディアは現役選手の時は辞退したのだから、引退を明確にした現在は受け取るだろうと考えていました。それでも拒否るイチロー。天才は頑固です。
国民栄誉賞と言うと王貞治さんが第一号です。その王貞治さんの元でイチローは第一回ワールドベースボールクラシック(WBC)を戦いました(結果、優勝)。
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その王さんについて、元プロ野球選手で同じくWBCを戦った稲葉篤紀氏は引退後、当時マイアミマーリンズに所属していたイチロー選手(当時)にインタビューに行きます(2015年10月)。
稲葉氏が質問します。
「(イチローが)王さんをひょっとしたら超える、ね、当然その立場になるかも知れない」
イチローは少し冷笑して断言します。
「いやいや。それは何やったって、ないんです」
「王監督の、それこそあの品格って、僕は絶対に得られないものです」
そしてここからがイチローの今回国民栄誉賞辞退の本質に迫る言葉ではないでしょうか。
「それは何を記録として残したって、それとは別の話で」
イチローは野球選手の垣根を越えて、様々なジャンルの人と対談をしています。ビートたけし、椎名林檎、トヨタ豊田章男社長などなど。野球だけでなく、色々な人に接してきたからこそ、「人間」を観ることが出来るイチロー。時には引退会見で見せた、記者の人格でさえも。
国民栄誉賞は王貞治さんのような品格があって受け取ることが出来るもので、自分にはそれがない」(実際、冗談かも知れないが「自分には人望がない」と稲葉氏に言っている)という考えなのではないでしょうか。
また王貞治さんや古賀政男さんなど国民栄誉賞は国民だれもが知っているような人物、野球や歌という垣根を越えて日本中をブームに巻き込んだような人物に与えるもの、であったはず。それが最近は政権利用という批判もある通り、垣根が低くなってきたという声もあります。
イチローは「求道者」です。道はどこまでも続くもの。終わりなき道が続く限り、イチローはそこに向かって歩み続けるでしょう、それは引退を発表しても、という事がわかったようなイチローの意志表明でした。(文◎編集部)