「結婚だけが女性の幸せではない!」 これが現代のアイドル MV撮影でウエディングドレス着用を拒んだアンジュルム・和田彩花

現役の大学院生として美術史を研究している和田さんは、雑誌『blt graph.』vol.41(東京ニュース通信社)に掲載されたインタビューでこんな発言をしています。

「大学で美術の勉強をしていると、その時代その時代の女性のあり方について学ぶ機会が多いんです。そこで学んだことは、アイドルをやっている自分にもすごく影響したりするんですね」

さらに、『CDジャーナル』2019年5月・6月合併号(シーディージャーナル)でのインタビューでは、美術を通して考えさせられる「女性のあり方」について、こんな例を挙げています。

「たとえば昔の話ですけど、女性がお家のなかにいなくてはいけないとか、お仕事もできない人も多かったわけで。そういう中で作品ができていったのを知ったときに、現実にはこういう世界があるんだと知って。さらにそれを問題として見ると、自分のアイドル活動をすごく重なるところがあった」

どの時代にも「女性は〇〇でなければならない」といった固定観念のようなものがあり、和田さんはそこに疑問を抱きながらアイドル活動を続けてきました。そして、その固定観念の代表的なものが「結婚こそが女性の幸せである」という考え方なのです。もしも、最後のシングルでウェディングドレスを着れば、「女性のゴールは結婚」といった固定観念を肯定しているかのように見えてしまうのではないか──きっと和田さんはそう思って、ウェディングドレスを着ることを拒否したのでしょう。

アンジュルムのリーダー、そしてハロプロ全体のリーダーを務めた和田彩花さん(画像は著書『美術でめぐる日本再発見 ー浮世絵・日本画から仏像までー』より)

和田さんは、「アイドルの幅を広げたい」と常日頃から話しています。それは「女性は〇〇でなければならない」といった考え方だけでなく、「アイドルは〇〇でなくてはならない」といった考え方にも疑問を呈しているということです。だからこそ、アンジュルムでは“多様性”が重要視され、メンバーそれぞれの趣味趣向、個性、やりたいことなどを尊重する方向性が打ち出されていました。

そういった状況の中で、「女性は〇〇でなければならない」の象徴と捉えられかねないウェディングドレスを着たならば、自身の考え方と矛盾するだけでなく、アンジュルムの方向性とも矛盾してしまいます。和田さんがウェディングドレスを拒んだのは、ただ単に自分の思想と異なる表現をしたくなかったからというだけでなく、アンジュルムの向かう未来の妨げになると考えたからなのかもしれません。