酒に酔って人を殴る人間は一体どんな思考回路をしているのか 傷害事件での裁判で被告人が見せた酒への偏愛

――同じようなこと、今まで一回もしたことないんですか?

「ないです。覚えている範囲では。」

――防犯カメラ映像を見ると何十発も、時間にして10分近く被害者を殴ってます。初めてだとは思えないんですけど、これまで一回もしたことない人がなんで突然こうなったのかな?

「飲みすぎていたので…」

――飲み過ぎてても普通、人を殴らないですよね?

「あの…飲み過ぎてて…」

――被害者に落ち度はあると思いますか?

「ないです」

――警察署での取調であなたはこう供述してます。『正直、僕が何の原因もなく殴るとは思えません。多分、相手が暴言を吐いたか煽ってきたんだと思います』。もう一度聞きます。被害者に落ち度はあると思いますか?

「…相手にはないです」

――警察官も殴ってますけど、自分のしたことどう思いますか?

「申し訳ないです」

――それだけ? 自分のしたことがありえないことだって自覚してください。いきなり殴られたら相手はどう思う?

「怒ると思います」

当然、今後の彼の酒との関わり方についても質問は及びました。

――そもそも何でこんな量のお酒飲むんですか?

「仕事の付き合いです」

――やむをえないんですか?

「はい」

――断れないんですか?

「はい。でも今は量は抑えて飲んでます」

――お酒をやめることはできないんですか?

「できないです。仕事の付き合いなので…気をつけてます」

――『お酒で失敗してるからソフトドリンクにさせてください』とか言えませんか?

「……」

――じゃあ何に気をつけてるの?

「飲む量を控えてます。コントロールします」

――事件起こした時、コントロールできてなかったですよね? コントロールしようと思ってコントロールって出来るんですか? 出来なかったから今ここにいるんじゃないの?

「…お酒を減らします」

事件の程度にもよりますが、このような酒が原因で事件を起こした被告人はたとえ本心でなくとも法廷では「酒はもう飲まない」と言ったりします。かたくなに「やめる」と言わない彼は正直と言えば正直ですが、被害者の立場に立ってみればここまでのことをしておきながら嘘の一つもつけない彼の態度には許しがたいものがあると思います。

被告人質問の最後に裁判官は念を入れて確認していました。

「あなたは従業員10人を抱える会社の経営者です。責任のある立場です。先程検察官にも聞かれてましたがもう一度質問します。今後、何に気をつけて生活していきますか?」

彼の答えはやはり変わりませんでした

「酒を減らして生活します」

(取材・文◎鈴木孔明)

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