川崎市登戸小学生殺傷事件 容疑者・岩崎隆一の自宅周辺を歩く マスコミ疲れした住民たちが口を閉ざした現場から

容疑者の自宅がある川崎市麻生区多摩美(たまみ)は、多摩丘陵に位置する閑静な住宅街である。最寄りの駅周辺に住む人によれば、

「高度経済成長以降に、立てられた住宅地。それだけに、サラリーマンなど比較的安定した人たちが住んでいるイメージがる」

ということだ。

もっとも、初期に住宅地を形成していった世代はいまや高齢になっており、実際、高齢者らが2、3人集まって話す姿がみられた。反面、住宅地ゆえにそこに住む人たちはある程度固定化されており、保守的な側面もあるのではないか。

岩崎容疑者に関しては、メディア疲れもあるのだろうが、周辺住民はほとんど語らない。というより、実際にかかわりがないという印象も受けた。つまり、容疑者は保守的な住宅街で住民はもちろん、扶養してくれる高齢のおじ夫婦、さらに現代社会必須のネットとも隔絶した生活を送り、なんらかの理由で人生に絶望。この卑劣な犯罪に走った可能性が高い。

押し寄せるマスコミ(筆者撮影)

ドライブレコーダーや防犯カメラで少しずつわかってきた容疑者の行動は、事件当日の朝、近隣住民に「おはようございます」と一声かけ、ウグイスが鳴くのどかな丘陵を駅方面に下り、小田急線で3駅の登戸駅に降り立ったということ。そこで、バスの進行方向から(つまり児童らの背後から)2本の包丁を振りかざし、凶行に及んだのだ。

被害者は、保守的なかつての新興住宅地に潜んでいた、幽霊のような存在が発する強烈な殺意の犠牲者となった。テレビなどでは、「専門家」があれこれ犯人像を“推理”するのに忙しいが、到底、この存在感希薄な人間の深奥部を探り当てることなどできまい。ましてや、ハイヤーで乗り付けるような、きらびやかな世界にいる大マスコミには。(取材・文◎鈴木光司)

弱小メディアからすると羨ましい限りである(筆者撮影)

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