殺人を犯した友人が「かくまってくれ!」 手を差し伸べると同時に成立する“犯人蔵匿罪” いったいどんな刑を受けるのか?
2,3日で阿部が出ていくと彼は思っていたようでしたが阿部はなかなか彼の家を出ていこうとはしませんでした。それは彼にとっては正直なところとても迷惑だったようです。
「出ていってほしい」
と何度か告げたこともありましたがあまり強くは言えませんでした。阿部にはもう行く所などないことがわかっていたからです。
「もう出頭したらどうだろう?」
そう促したこともありましたが、これも強くは言えませんでした。
「阿部ももう57歳なんですよ。服役したらもうこっちに生きて帰ってこれないと思って…言えませんでした」
こうしてズルズルと時間は過ぎていきました。
2人の生活は同年7月11日に終わりを迎えます。阿部が乗っていた車から足がつき警察に発見され逮捕されたのです。
同日、阿部を匿って逃走を助けたとして上野も逮捕されました。
阿部の犯行はもちろん、上野の犯行も許されるものではありません。
ただ自分が同じ境遇に置かれたらどうするのか、と考えてしまいます。
もしも友人や家族などが大きな罪を犯し、その人が頼ってきたとしたら。
目の前にいるやつれて疲れきった表情の、他に誰も味方がいなくなった大切な人を突き放せるでしょうか? それは果たして正しいことなのでしょうか?
犯人蔵匿罪の法定刑は「2年以下の懲役または20万円以下の罰金」です。上野の求刑は懲役10か月でした。
そして犯人蔵匿罪には、親族が犯人または逃走者の利益のためにこの罪を犯した時はその刑を免除することができる旨の特例も規定されています。(取材・文◎鈴木孔明)
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