殺人を犯した友人が「かくまってくれ!」 手を差し伸べると同時に成立する“犯人蔵匿罪” いったいどんな刑を受けるのか?
上野正平(仮名、裁判当時49歳)は事件発生直後に知人から電話でこの事件のことを知らされました。
彼は阿部のことをよく知っていました。一時的とはいえ同居していたこともあります。
テレビに「逃走中の容疑者」として映っていた人物は、間違いなく彼の知っている阿部勝本人でした。
彼と阿部が知り合ったのは刑務所の中でした。同じ時期に2人は服役をしていたのです。
やがて出所した2人でしたが、出所後も関係は継続していました。平成29年には先述した通り同居もしています。
この同居はあまりうまくいかなかったようです。
「あの時は阿部にかなり迷惑をかけられました。立て替えた携帯代を返してくれなかったりとか…」
そんな事情もあり別々に生活するようになりました。その後はあまり連絡を取っていなかったようです。
阿部が事件を起こしてから約5ヶ月後、令和元年6月27日のことです。突然、逃走を続けていた阿部が上野の家にやって来ました。
「もう疲れた…。休ませてくれ」
そう告げる阿部は以前の阿部とはまるで別人でした。上野は裁判でその時の心情を涙ながらに、
「あんまり弱い部分を見せるような人じゃないんですよ。なのにやつれちゃってて…」
と話していました。
「匿ってくれ」
と頼まれた彼は当然困惑しました。「犯人蔵匿罪」という罪名は知らなくても指名手配中の犯人を匿えば犯罪になるとわかっていました。また、拳銃を持って逃走している殺人犯を匿うということが社会にどれだけの脅威を与える行為なのかも十分理解していました。断らなくてはいけない、そう思っていました。
しかし、考えと裏腹に彼の口から出たのは承諾の言葉でした。
「あんなにくたびれた顔で『疲れた』って言ってて…。休んでほしいって考えて、いや、考えたというかつい口から出てしまってました」
こうして彼は上野を自宅に泊めました。犯人蔵匿罪の成立です。
参考記事:綾瀬女子高生コンクリート殺人の主犯格・湊伸治被告が傷害罪での第六回公判で見せた“反省”と“被害妄想” | TABLO