都市設計論としての「繁華街と裏社会」

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 例えば歌舞伎町を例に挙げてみよう。

 歌舞伎町は靖国通り、職安通り、明治通り、お滝橋通りで四方に囲まれた数百m四方のそれほど大きくにない街である。

 その歌舞伎町を靖国通りから縦に分断する通りが、一番街、セントラル通り、さくら通り、あずま通り、区役所通り。そして歌舞伎町を横に横断する細い道が花道通りだ。花道通りから靖国通り側は新宿駅に近い為、サラリーマンや学生の客が多く、花道通りから職安通り側は水商売やその客が多いと言える。

 

 地球上のどこの国の繁華街にも裏社会が存在する。歌舞伎町も当然、例に漏れない。現在は改正暴対法、暴力団排除条例の施行の為、以下のような光景はなくなった。

 

 例えば、銃撃事件があった風林会館一階の喫茶店「パリジェンヌ」。ここでは月に何度も暴力団の会議が行われ、現在は改装され面積が小さくなったこの店だが、席の半分を暴力団員が埋めていたものだ。これは「パリジェンヌ」に限った事ではなく、他の喫茶店や時には定食屋の二階席が全員暴力団員で埋まっていた事もある。

 

 暴排条例施行後、あるいは石原前都知事時代に行われた「浄化作戦」によって「地回り」が行われなくなった。「地回り」とはデモンストレーションの意味もあるのだろうが、これも月に一回位の割合で、暴力団員が数十人くらいで歌舞伎町を定期コース通りに見回るというものである。

 某武闘派組織などはユニフォームのように、揃いのジャージを着て地回りをする事で有名だった。これによって、治安が悪いように思われるだろうが、逆転の発想もある。まず、客は暴力団員を認識しやすく、当然ながらこういう集団の側には近寄らない。

 

 そして、悪質なキャッチが跋扈する事もなかった。石原前都知事が「東京の繁華街をきれいにする」という名目で行われた、浄化作戦。警視庁の内規では「四都市浄化作戦」とも言われている。

 つまり、歌舞伎町、渋谷、六本木、池袋を重点的に取り締まろうというものだ。ドーム型の180度見渡せる監視カメラが街の至る所に取り付けられた。歌舞伎町には五十台以上と言われている。

 

 因みに、監視カメラは有線で映像をつなぐが無線で、電波を飛ばすタイプもある。ある探偵が言う。

「歌舞伎町に限っては電波式カメラは見つけられませんでした。その代わりに盗聴器が仕掛けられていました。ラブホテル街です」

 広帯域受信機(ワイドバンドレシーバー)にあらかじめ、よく使用される盗聴電波の周波数を登録しておきスキャンさせる。そうした結果、ラブホテル街から盗聴電波が出ていた事を発見したのだという。盗聴器もこの街の至る所に仕掛けられているのでは、と想像する。

 

 キャッチの話に戻るが、悪質さで言えば札幌・すすきのが有名だったが最近では歌舞伎町もそのようになっているようだ。たまに、キャッチが十m以上、客について回る時がある。黒人などはそれが顕著であるが、条例違反である。また客に暴言を吐いたり、暴力を振るうキャッチも出現している。

 暴力団はいきなり、一般人を襲う事はないが、キャッチは客を襲うのである。つまり、浄化作戦のせいで、歌舞伎町はより歩きにくくなったのではないか。

 

 歌舞伎町は怖い。というイメージがある。それは暴力団の人口が多いからだろう。確かに近寄り難い。であるならば、暴力団員には近づかなければいいのである。

 しかし、キャッチは向こうから近寄ってくる。キャッチについて行けばまず、ボッタくられる。これは99%と言っていいだろう。

 以前までは一人、五十万円ボッタくられたという話もあったが、最近は二万円、三万円の世界。五万円以下で中途半端にボッタくり、酔客に「まあ仕方がないか」という諦めの気持ちを生じさせる為である。

 裏社会がこうしたキャッチの横暴を止める抑止力になっていた事は否めない。その裏社会が法や条例によって、その威力をそがれた際、より繁華街の秩序が乱れていっているように見える。

Written by 日刊ナックルズ編集部

Photo by arztsamui

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