マスコミが報道する「人身売買組織」ほど非現実なものはない デスクに座っていればニュースが流れてくる“記者クラブ”は権力の犬なのか
各局横並びの報道といい、まず警視庁が望むままの報道と言っていい。そのなかで、入管難民法違反、不法残留、人身取引……などという「刺激的」なワードが並んでいる。興味がない一般国民が見れば、なにかとんでもない残酷なことが行われて、それを警視庁が摘発した!と思ってもおかしくない。実際、国連などで日本が人身売買を行っているとする根拠のひとつが、今回のような事案だ。
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もちろん、人身取引や借金をかたに仕事をさせるのは非人道的であり、許されるものではない。ただ、この報道の映像で見て取れるだけでも、借金返済は8回で終わっており、その後フィリピン人ホステスが逃げ出した、あるいは保護を求めたという話は出てこない。また、売春を強要されたなどという報道もない。
誤解を恐れず言えば、もし、経営側・ホステス側両者の間に合意があったとすれば、(法は別にして)ウィンウィンの話であり、ことさらセンセーショナルに煽るようなことではないだろう。
実際、「事件現場」となった群馬県太田市の繁華街には多数のフィリピンパブがあり、スバルの企業城下町として好景気を享受する労働者たちの憩いの場ともなっているのだ。
そのような状況下で、なんら背景も説明せず、ただ用意された資料だけを垂れ流し、結果的に警視庁の広報としての役割を担っているのが、大マスコミの記者クラブである。それが、下々の「風俗関係」となればなおさら、ということなのだろう。(文◎堂本清太)