日本人にとって決して無関係ではないイスラム国 フィリピン巨大建設プロジェクトの闇

こちらからの続きです

身代金目的ではない少年少女の不気味な誘拐 フィリピン・ミンダナオ島、「イスラム国」が跋扈する島から

行方不明となった少女(筆者撮影)

ビニールシートが掛けられただけの粗末な屋根、傾いた小屋の中からひとりの女が現れた。
家の中には私たちが入って話を聞くスペースがないので、家の横に植わっているバナナの木の葉影に私たちは腰を下ろした。

彼女の名前はデジリー、年齢は39歳だと言った。当時3歳の娘が何者かに連れ去られた。小太りの彼女は娘が行方不明ということもあるのだろう、顔には暗さを宿していた。

「娘の名前はチャリズと言います。5年前に彼女は連れ去られました。その日、父親に連れられ、ここからほど近い海岸にいたんです。父親が仲間と酒を飲んでいて、目を離している隙にいなくなってしまったんです」

夜11時頃のことだというが、それっきり彼女の消息は途絶えてしまった。

「事件からしばらく経ってから警察がここへやって来て1枚の紙を見せました。それは指名手配書でした。その紙にはひとりのムスリムの名前が書いてありました。すぐに犯人も捕まると思ったのですが、警察からはその後まったく音沙汰もありません」

その後、見ず知らずの男がこの家を訪ねて来て、娘の所在を知っていると告げたという。

「その男はムスリムで、娘はムスリムの若い夫婦の元で育てられていると言うのです。その男が『18万ペソ払えば、連れて戻してやる』と。私は金を何とかかき集めて、その男に渡したんです」

それっきり、男からの連絡は途絶えた。そして2年前には、警察によるチャリズの捜索も打ち切られてしまった。
果たしてチャリズはどこへと消えてしまったのか、はっきりとしたことは言えないが、身代金を要求する連絡が無い事などから、臓器売買目的で連れ去られてしまった可能性が高いのではないか。