日本人にとって決して無関係ではないイスラム国 フィリピン巨大建設プロジェクトの闇

現地で取材を進めていくと、臓器売買目的で連れ去られた子どもは、マニラに連れて行かれるケースと、海を渡ったマレーシアへと送られる場合があるという。
マレーシアでは臓器移植が認められているが、臓器移植希望者に対して、ドナーの数が少ないのが原因で毎年5千人以上が移植を受けられずに亡くなっているという現実がある。それ故にこの地で連れ去られた子どもたちはマレーシアに売り飛ばされることも十分に考えられるのだ。

ミンダナオ島南部とマレーシアの間には、国境線が引かれているが、それは全く障壁にはならない。ボルネオ島のあるマレーシアは宗教がイスラム教ということもあり、歴史的にもミンダナオ島と繋がりが深く、かつては海峡をまたいでスールー王国というイスラム王国が存在した。スールー王国はフィリピンを侵略したスペインに対しても闘いを続け、アメリカによって併合されるまで独立国であり続けた。

スールー王国が他国との貿易において主要な産物としていたのは奴隷だった。スールー王国はムスリムではない人々が住む地域に侵入し、連れ去ると奴隷として売り捌いてきた。

臓器売買ではないが、かつては日本人のジャーナリストがミンダナオ島のイスラム武装組織に身代金目的で誘拐される事件も起きている。そして、近年でも身代金目的の誘拐事件が頻発している。

ムスリムの影響力が根強いミンダナオ島で2017年にISは蜂起した。昨年のうちに政府軍が勝利宣言を出したが、今も掃討作戦は続いていて、出口の見えない戦いは続いている。
そんな状況の中、フィリピン政府は鉄道の敷設などの開発を進めている。当然ながら、巨大プロジェクトには日本政府も一枚噛んでいる。そうした動きは、フィリピン政府に不信感を持つイスラム過激派を刺激するだろう。今後日本人が誘拐などの標的にされることは間違いない。[了](取材・文◎八木澤高明)