沢木耕太郎によって傷付けられた石原慎太郎 『水道橋博士×町山智浩 がメッタ斬りトーク』(6)

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町山:うん、そうか、どうやろうと思うよね。(拳銃を触りながら)とりあえず安全装置はどこだとかさ。

博士:そっちかい~!(爆笑)

町山:こうやれば引き金はひけないとかね……。ガンマニアだから、そういうこと考えちゃう。

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博士:考えちゃうんだー。でも俺は、もう、そこまで状況が行っていたら、映画のフリでいえば、今なら冷静に「撃てよ!」って言うけどねー。

町山:そっちの方がかっこいいね!

博士:かっこいいっていうか、だって、そのために本って読んでんだもん。映画を見てるんだもん。町山さん曰く、「映画が人生の予行演習だ!」としたらさ、本や映画は、どうやって自分が人生の修羅場で、イモを引かないように、生きていくために、その練習をやっているでしょ。人間は全ては体験できないから、だから一生懸命、本や映画で疑似体験しているわけじゃん。

町山:「イモを引く」って話だと、石原慎太郎が、市場移転問題でぶざまな形を見せたのが批判されたけど、『藝人春秋2』のなかで、博士は、慎太郎があの時はこうすればよかったって書いてますね。その文章で、最後に出てくる台詞が「オレに是非を問うな」。

博士:野村秋介さんね。「……激しき雪が好き」

町山:慎太郎は野村秋介を引用しないよ。俺、野村秋介さんには取材で何回かお会いしたんだけど、彼は石原慎太郎さんにすごく怒っています。その理由はいくつかあるんだけど事件は、一つは韓国から帰化した議員が立候補した時に、彼の選挙ポスターに「北朝鮮のスパイ」ってシール貼って回ったのが石原慎太郎の秘書だったから。野村秋介さんはちゃんと自分で石原慎太郎の事務所に抗議して、戦った。だから慎太郎は絶対、野村秋介さんを引用しないよ。

博士:もちろん、野村秋介さんも百瀬博教さんとの交流もあるから、ボクもふたりの関係は出会いの時から遡って調べているんですよ。よく知っている。野村さんと石原さんとの関係も。でも俺の中では、豊洲移転問題で、罪を問われて、百条とか言われた時には、慎太郎は記者会見せずに、『朝日新聞』に行って自決すればよかったと思う。
あ、今の本気じゃない、冗談ですよ(笑)。

町山:僕は石原慎太郎に会った時、「野村秋介さんがすごく怒ってましたよ」って言った。そしたら「あれは誤解であって、シール貼ったのは僕じゃなくて事務所なんだ」と言い訳した。でも、それって責任は自分にあるじゃん。

博士:でも、恥辱を感じた人は、やる人はやるから。ボクは「福田和也に会ったら絶対殴る」って言ってた時期があるんだけど(笑)。あ、今は完全に撤回しているけど(笑)。でも、あの頃だったら、会えば、絶対殴るもん。人はそういう風な状態になるもん。
今、俺が何を言おうとしてるかというと、福田和也が講談社新書の『悪の』シリーズとかなんか、ワルぶって、散々評論で書いたことは、「作家っていうのは殴るやつが偉い」っていうことを書いてきたの。で、俺の『藝人春秋』が出た時、『SPA!』で坪内祐三との対談で、あの本を「千年、認めない」っていうことを言ったのね。
俺は書評されるのは批判でも大好きだから良いのだけど、スパンが千年だと、欠点とか悪いところはもう直せないじゃない? しかも、別口で殿の映画の悪口まで言われててさー……。弟子で、そこを抗議するやつが誰もいないから、それが無念で、無念で。ひとりで絶対、やってやると決めていて。で、その頃、MXテレビの『ニッポン・ダンディ』って番組で曜日違いの共演者だったから、福田和也が……。大川プロデューサーに頼んで、一度だけでも良いから同じ日にしてくれって。

町山:実現したの?

博士:その前に、福田和也が番組をクビになった。だってフリートーク、声は小さいし、全然、喋れないんだもん。で、その後、坪内祐三さんに会ったりして、今は、その宣言は撤回してますけど。
そこにはボクがこだわるんだろうなー。狂気と侠気は芸人のうちだから。
今、週刊文春の連載は、お笑い界のビンタ論もテーマにしてる。日野皓正のビンタを巡って、爆笑太田、松本さん、殿、皆、見解が違うじゃない? それは週刊で書いているけど、文字数が短くて、本意が伝わらないから、新たに単行本で全部、書くけど。

町山:あのねー。殴っちゃだめ。だってね、人の頭蓋骨って、ものすごく厚いから。

博士:それ、町山さんが、完全に殴ったことあるじゃん(笑)

町山:殴ると、手の方が折れますから。

博士:何? この間、アメリカの砂漠で、マッドマックスの祭りのレポートやってて、骨折ってたけど、あれって殴ってたの?

町山:だって、手の骨って割り箸ぐらいの細さしかないのに、頭蓋骨って体の中でいいばん厚いんですよ。同じ力でぶつかれば手の方が負けますから。だめ、殴っちゃ、ね、本当に。ゲンコツよりもいいものがあるでしょ。俺、本当暴力反対だから。ほら、パイで全て解決すればいい。

博士:パイは揉むべきか、それとも投げるか?

町山:揉むのはオッパイだよ!(笑)。パイにしちゃえば戦争なくなるよ。ものすごい恥かくしね、あれくらうと。

博士:俺、世間から好戦的にも思われるているし、こういうポジションにいると、結局、行動派なパヨクみたいに思われるのね。もともと、俺、「パヨク」の言葉の語源も意味もよく分かってないから。
勉強しようと思って、千葉麗子の『さよならパヨク』って本を読んでいたら、ブックカバーつけてないから、廻りに、やっぱり博士って右翼なんだって思われたり(笑)。あれって青林堂から出てるから、ガロ世代としては、それも、しみじみと哀しかったりね。
だから、政治的なポジションとか、思想性はなくしたいの。自分の中で権利として放棄してるのは、戦争放棄みたいな感じで政治的な地位を俺は絶対に永遠に持たない。何かの団体の、何かで立候補したり、そういうのはなくて。そんな俺でも、今までに勘違いして政党から立候補の依頼があったりするわけですよ。

町山:どこから来たの?

博士:みんなの党。江田憲司に根回しされていた(笑)。そういうことが二度と起こらない、そのためだけに、『水道橋博士のムラっとびんびんテレビ』に出てるんですよ。(次回はいよいいよ最終話! |文中敬称略)

(2017年11月30日〈文春トークライブ 第20回〉
町山智浩×水道橋博士『言霊USA』vs.『藝人春秋』より)

 

やしきたかじん曰く「お前(博士)は芸人の目じゃない!」 『水道橋博士×町山智浩 がメッタ斬りトーク』(終) | TABLO