ケンカ最強の漫画家は誰だ!? 一位はヤンキー漫画の代表作を描いた、あの先生! 常に「武器になるモノを確認」する武闘派?
●きうちかずひろ先生
ラストは、近代ヤンキー漫画の祖、『BE-BOP-HIGHSCHOOL』(「週刊ヤングマガジン」以下『ビーバップ』)で知られるきうちかずひろ先生。現在のアラフォー、アラフィフできうち先生の『ビーバップ』を夢中になって読んだ人は、数多いでしょう。この作品はヤンキーだけでなく、普通の学生も愛読していた点が特色です。
僕も愛読していました。インタビューを二回しているのですが、二回とも緊張しました。
『ビーバップ』の凄いところは、『クローズ』につながる「ヤンキー漫画」「不良の漫画」のひな型を作った点です。この漫画が世に出なければ現在の「不良の漫画」は無かったかも知れません。
『ビーバップ』以前は本宮ひろ志先生の作品に代表されるような「番長漫画」でした。日本中の番長が富士山(でもどこでも良いですが)に終結して、日本一の番長を決めるというような。
『ビーバップ』はそのアンチテーゼとして生まれた作品のような気がします。日本中ではなく、半径10km以内で起きている喧嘩やもめごとを描いているのが特徴です。主人公の行動範囲が狭まったのが、きうち先生が描き出したリアル路線です。
インタビューでは当時、横浜銀蝿というグループが流行っていたのに対して、きうち先生は「あの人たちのラジオを聞いていたんですが、みんな信号は守ろうぜと言う。そんなの不良じゃないでしょ」と言っていたのを覚えています。
インタビュー中は非常に穏やかに答えて頂いていたので、「紳士的ですね」と言ったらにやりと笑って、「まあでも、何が起きるか分からないから部屋にある武器はどこあるか確認していますけどね。今だったら机の灰皿とか」と返答をしたのもよく記憶しています。「怖っ」と素直に思いました。根っからの不良少年なのでしょう。
またいかにも地元にいる怖い先輩を描くのも上手で、一回目のインタビューの際はインタビュアー植地毅氏と伺ったのですが、主人公トオルの先輩で「源田」という男が出てきます。上下ジャージで、アイパーが伸びきったようなヘアスタイル。植地氏が「本当に地元にいそうな先輩」と言ったのが印象的でした。
因みに、「源田」のあだ名が「鉄腕ツトム」。あだ名で言うと主人公トオルは「狂犬病」。このあだ名はその後、ヤンキー漫画・不良漫画にたびたび「流用」されました。あだ名に著作権はないのでしょうが『クローズ』の続編『WORST』ではまんま「鉄腕ツトム」という人間が出てきますし、「狂犬」も出てきます。きうち先生のあだ名をつける能力は、現在の不良漫画にも生かされていると言ってよいでしょう。
と、不良漫画におけるきうち先生の功績もさることながら、インタビュー中に見せる「不良少年」独特の発想がリアルでしたので個人的に独断で申しわけないのですが最強漫画家とさせて頂きます。(文◎久田将義)
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