絶対に見に行くものか「死刑囚表現展2020」と社会の声 津久井やまゆり園19人殺害事件・植松聖死刑囚の身勝手な優生思想も展示

ここまで見てくると、同展は批判の通り「被害者感情を逆なでするだけの無意味なもの」であるようにも感じられます。確かに、起こってしまった事件に対しては無意味かもしれません。しかし、目の前に展示されている作品が肉筆であるという事実が、見る者に突きつけてくる何かはあります。

死刑囚表現展2020(筆者撮影)

例えば、前出の井上死刑囚の絵画「小野櫻乃精薄墨」は、月岡芳年の絵を元にして描かれ、黒を基調としながらもバランスの良いカラフルさで、線にも迷いがなく技術的に高いものがあることが見て取れます。また、魚や昆虫・鳥などを薄墨で描いたのは、館山で放火殺人を犯した高尾康司死刑囚。誇張も無理もなく、対象と静かに向き合ってありのままに描いたことの伝わる作品からは、死刑囚が「あちらの世界」の人間ではないことを感じさせます。その他にも、知人に報酬を出して実弟を殺害させた長谷川静央死刑囚の作品は、ピカソの影響を感じさせるキュビズム的な描き方や、ヴァロットンのような大胆な画面構成が見られ、美術が好きであることがわかります。一方で、子供用の布団や衣類にあるような柄をパステルカラーで描いてはいるものの、稚拙な表現であることが否めない作品は、鳥取で6人もの不審死に関わったとされる元ホステスの上田美由紀死刑囚のもの。どれも「その辺にいる人」が描いたように感じられるのです。

肉筆から伝わってくる、死刑囚の息遣い。私たちは、自分が被害者(またはその家族)だったらという想像は、いくらでも逞しくできますが、その息遣いから「誰しもが加害者(またはその家族)になる可能性がある」ことを感じることができました。悪人が悪いことをするのではなく、誰もが「縁」によって悪人にも善人にもなるのだということが見えてくる部分については、意味のある展覧会であると思います。

ただ、それを被害者感情を越境してまで開催すべきかは、議論の余地があるようです。(取材・文◎Mr.tsubaking)

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