偶然か、必然か…未解決事件の真犯人を奇跡的に描き出していた映画『殺人の追憶』|李策

日本でも有名な韓国の猟奇事件「華城(ファソン)連続殺人事件」の真犯人、李春在(イ・チュンジェ)受刑者の8件目の殺人事件の犯人と誤認され、20年にわたり無実で獄中生活を送ったユン・ソンヨさん(54)に対し、韓国の水原(スウォン)地裁は先月19日、25億1700万ウォン(約2億4000万円)の刑事補償金を支給する決定を下した。

李春在が14人を殺害し、34件もの強姦および強姦未遂を行った同事件は、これを題材とした映画『殺人の追憶』(2003年)がヒットしたことで、日本でも広く知られることになった。また、監督のポン・ジュノが『パラサイト 半地下の家族』でカンヌ国際映画祭の最高賞パルムドール、アカデミー賞で作品賞はじめ4部門を受賞したことで、世界的にも有名な事件となった。

韓流映画やポン・ジュノのファンの間では、『パラサイト』の成功後もなお、『殺人の追憶』こそが彼の最高傑作であるとする声が少なくない。そして、そうした根強い支持を支える要素の中には、『殺人の追憶』で描かれた容疑者像と、真犯人の類似性の高さがあるものと思われる。

一連の連続殺人とは別の強姦殺人(1994年)で無期懲役刑を受け、収監されていた李春在は2019年、進歩したDNA鑑定技術によって華城連続殺人の証拠と一致点が見つかり、自供に至った。

顔、出身地も同じ

これを受けて公開された高校生時代の写真、そして彼の素性に関する情報に接し、驚愕した映画ファンは少なくないだろう。映画の中で俳優パク・ヘイルが演じた有力容疑者パク・ヒョンギュのキャラクターと酷似していたからだ。