キラキラネームだけではない 「キラキラ地名」に注目してみたら東急線沿線になぜか集中

東急田園都市線は中央林間駅を終点として上りは渋谷、青山一丁目、表参道、三軒茶屋、半蔵門などなど地価が高い駅名がずらりと並び気おくれしてしまう人もいるかも知れませんが、下りはそうでもありません。まず「鷺沼」というきっと鷺がたくさんいた沼があったであろう、素晴らしい駅名があります。「沼」があった名残として鷺沼小学校は坂の下にあります。そこからも昔を感じさせます。

その隣には日本で最も早くカタカナの駅名がついたであろう「たまプラーザ」があります。そもそも、ここは青葉区(旧・緑区)であり、さらに「美しが丘」という取ってつけたような地名にあります。因みにたまプラーザに「丘」というほどの「丘」はありません。さらに「平津」というバス停があるのですが「津」がついているので港でもあるのかと思いますが、この土地は山の中です。謎の地名です。

続いて隣の「あざみ野」もキラキラ系です。「アザミネーゼ」というメディアが土地の価格を上げるためかつけたニックネームも定着ししまいしまた。数十年前までは空き地だらけの土地でした。下りの終点の「中央林間」に向かっていくにつれ、「青葉台」「藤が丘」「すずかけ台」「つきみ野」といった涼やかで人工的な駅名が多くなっていきます。

ただ上りの方に行くと「溝の口」という闇市があった駅や「二子新地」というかつて「三業地」(置き屋、料亭、待合。つまり今風に言えばラブホテル、料亭が合わさった場所。「新地」は全国にあった。例・飛田新地)があった駅があります。隣の駅は言わずと知れたセレブの街、「二子玉川園」です。マツコ・デラックスさんが嫌いと公言している街です。二子新地はしかし、地縁が深く、ノンフィクションの名作「疵」(本田靖春著)の主人公で戦後の渋谷を牛耳った安藤組の大幹部。素手ゴロ日本一と言われた喧嘩師花田敬が最期を遂げた土地でもあります。

あの近辺には「美しが丘」のほか「百合丘」「新百合ヶ丘」といったキレイな名前がありますが、もう少し行くと「多摩クリスタル」といった風俗店があったことは余り知られていません。因みに「たまプラーザ」は億ションも建てられ、作家村上龍や一部上場企業の社長が住んでいたりしますが元は田んぼだった土地です。周辺には「犬蔵」という地名があり、犬は昔は日本狼の事を指していたのでこのあたりには江戸時代には生息していたのかと推測してしまいます。
キラキラ地名はライバルの西武線より東急線に生息している傾向があり、探求すべき路線です。

因みに京浜急行の「黄金町」はキラキラとは異なります。英語に訳すと「ゴールデンタウン」ですがかつて「ちょんの間」という青線地帯(非合法風俗)だったのですが、この名称と似ている街を思い出しませんでしょうか。そう。歌舞伎町の「ゴールデン街」です。ここも青線でした。

ですからキラキラではなく、街の人々がかつては「暗所」(ここでは、こっそりと商売するの意味で)だったのが東京都の石原都政あたりから「浄化作戦」が行われ、それが神奈川にも波及したと思われます。こういった由来のある地名の探求は面白いのですが、キラキラはどうしても浅薄なイメージがぬぐえません。もう遅いですが「高輪ゲートウェイ」のような「カタカナつけました」的な駅名は勘弁して頂ければ幸いです。(文・写真@久田将義)