バツ3女性の生きざま『大豆田とわ子と三人の元夫』 松たか子・岡田将生・松田龍平・角田晃広らが好演 坂本裕二脚本が秀逸

5月11日放送の第5話で、3回離婚した男性がプロポーズされたとわ子は「離婚は男性にとって勲章、女性にとっては傷」と相手から見下すように言われ、「離婚に勲章も傷もないと思うんですね。別れた人たちだって、幸せでいてほしい。人生に失敗はあっても、失敗した人生はないと思うんです」と穏やかに反論した。

未練を残す二番目と三番目の元夫にとわ子は半ばあきれながら、やり過ごすこともできる。別の女性に片思いをしたことに気づき離婚した最初の元夫が心寄せる相手が親友かごめ(市川実日子)であることも第五話でわかったが、平静を保とうとしていた。
その一方で、三番目の元夫・中村慎森(岡田将生)は自らの言動について、「いいことは言いますよ。ただ実践できないだけで」とつぶやく。男性の未成熟ぶりを際立たせたシーンだった。

18日の第6話でも、慎森は「こんなだめな三人なのに、彼女はそこを怒らなかった。僕たちは大豆田とわ子に甘えてたんです」と振り返った。前編が完結した第6話で、かごめが急死した。カギを握ると思った人物がいなくなり、「大豆田」の後編はどこへ向かうのか。腰が定まらない男性の未熟さをより掘り下げていく予感がする。自らのこだわりを強調することによるおかしさを打ち出した「最高の離婚」と違い、幼稚さを自覚しながら改められない男性のこじらせぶりが「大豆田」のテーマとなっているからだ。
「大豆田」では毎回、冒頭でストーリーの展開を予告するドラマでは異例の進め方をしている。語りもコミカル調。伏線を張って最終
盤で回収してうならせるような従来のドラマ手法とは真逆の姿勢を取っている。物語を堪能させて視聴者にカタルシスを与えることはあえて狙わない。映画監督是枝裕和との対談で、「テレビっ子ではなかったので、テレビドラマはほぼ観ていないんです」(「是枝裕和対談集 世界といまを考える1」、PHP文庫)と語る坂元らしい選択と思える。

日常生活の一瞬や会話にこそ人生の真実がある—-そんな坂元ドラマの哲学が「大豆田」で存分に発揮されている。主要な登場人物の半生について詳細な履歴書を記すという坂元の持ち味が、とわ子と取り巻く人物でも生きている。とはいえ、それだけに後編の運びは読みづらいが、ありふれた終わり方だけにはならないに違いない。(敬称略)<文@川本裕司(朝日新聞記者)>