石原慎太郎が沖ノ鳥島上陸で見せた余裕の無さ 「岩じゃない!小さい島なんだよ」記者に怒りをぶつけた元都知事のパフォーマンス 

2005年5月。東京の竹芝桟橋から小笠原の父島まで客船おがさわら丸(先代)で25時間半。そこから、沖ノ鳥島までは24時間。忙しい慎太郎氏は父島から、客船に乗り込んできた。
彼は当時72歳。中々の長身で、背筋がスラッとしていて、真っ黒に日焼けし、年の割には若々しかった。周りには取り巻きがたくさんいて、とにかくピリピリしていた。船に込むとき彼は挑発的に言った。

「(沖ノ鳥島には)シナの潜水艦が待ってるぞ!」

20数時間後、おがさわら丸が現場海域に到着する。
クレーンでモーターボートが降ろされ、慎太郎氏ら選ばれたメンバーは、環礁の中の浅い海に入っていき、陸地に上陸した。すると彼は派手なパフォーマンスを繰り広げた。

「日本国」と書かれた銘板に口づけしたり、畳一畳ほどもありそうな日の丸を振りかざしたりした。その後はウェットスーツ姿となり、足ひれをつけて、ザブンと海に飛び込んで泳いでもみせた。

午後4時前、おがさわら丸に帰投、午後5時半からは視察を報告する記者会見が行われた。そこで彼は刺激的・差別的な物言いで中国を挑発しまくった。
「シナの潜水艦が浮上してくれたら良かったのにな。これだけのものがあるんだから見せてあげればいいんだ。勝手に見てるだろうけどな。彼らがこの辺に来るのは漁場調査なのではなく、海底の地形を調べに来ているんだ。アメリカはもっと認識したらいい。領土は自分たちで守らないとな。尖閣諸島だって自衛隊を送ったほうがいい。共産党政府は嫌いだな。彼らは市民社会を経験したことがないんだから。言論の自由はないし、すごい経済格差がある。こんなの国じゃない。そのうちマグマが爆発するよ」

瞬きをしきりにしながら、苛立ち混じりでの発言。その口調は緊張しつつも、世間に警鐘を鳴らす自身の発言に対し、自身が満足しているように見えた。
あるテレビ局記者が「上陸して、あれは島だと思いましたか?」と質問したことで、荒れた。
「岩だって国土だよ。何を以て島とするんだ。きみはどっちの人間だ。あれは島だ。ちっちゃな島だ。文句あるか!」
苛立ちつつも冷静さを保っていた口調は、記者への怒りという形で爆発した。慎太郎氏は記者に対して、けんかを売るような言葉遣いになった。
岩が国土なのは中国も認めている。問題は島と認められ、排他的経済水域が生じるかどうかにかかっているのだ。裏返して言えば中国政府を強烈に意識している石原慎太郎という政治家がうっかり口をすべらせるほど、島は小さかったということかもしれない。

沢木耕太郎によって傷付けられた石原慎太郎 『水道橋博士×町山智浩 がメッタ斬りトーク』(6) | TABLO