ネットで賛否両論 9月に朝倉未来vsメイウェザー 「世界中をエキシビジョンで楽しく旅している」 舐められていると言われても仕方ない記者会見
それは選手たちが身体と生活をも賭けて過酷なトレーニングと減量を経て、人生そのものの闘いをリング上で見せるからです。その真剣勝負に僕たちは、魅せられてきました。
何十年経った今でも語り継がれる名勝負はまさに「真剣勝負」「死闘」でした。辰吉丈一郎vs薬師寺保栄、畑山隆則vs坂本博之、桜庭和志vsホイス・グレイシー、魔裟斗vs山本KID等々数え上げたらきりがないので、この辺りにしておきますがネットがない時代とは言え、テレビ放送の影響は言うまでもなく大きかった訳です。格闘技ファンでなくてもテレビをつけたら、見てしまうからです。
振り返って、那須川天心選手vsメイウェザー戦。現役のボクサーや元チャンピオンクラスからでも「メイウェザーとグラブを交わるのは凄い」と賛成の声が聞こえます。確かにそうです。ただしメイウェザーが現役であるならば。
事実、対格差が1.5倍くらいあるのではないか?とさえ思われたほどの体重でリングに表れたメイウェザーは、笑いながら「神童」と言われたキックの天才・那須川天心選手を一蹴しました。手も足も出ませんでした。
さて、これは上記の名勝負のように語り継がれる試合でしょうか。魂と魂がぶつかり合ったのでしょうか。答えは否です。メイウェザーはわずが数時間日本に滞在し、十億円とも言われるギャラを貰って帰国しました。ここにどこに感動の要素があるのでしょう。運営は何を見せたかったのでしょう。
僕らは練習試合を見る為に課金をしている訳ではありません(この試合は地上波でしたが)。
50戦無敗のメイウェザーと言えど、現在45歳。それでも恐らくボクシングルールで初めて闘う朝倉選手を圧倒するでしょう。
記者会見でメイウェザーは喋りまくりました。体内時計では15分以上、1人語りでした。独壇場でした。朝倉選手がインタビューがさほど得意ではないとは言え、失礼ではないでしょうか。この長い話を途中で切れなかった事に、RIZINとメイウェザーの位置、すなわちどちらが立場が上か、透けて見えてきたような気がします。RIZINとしては、メイウェザーの名声とアメリカでの知名度とコネクションで「何か」をしたいのでしょう。
メイウェザーの言葉を正確ではないけれど、気になった部分を抜き出してみます。
「世界中をエキシビジョンで楽しくやっている」「ローガン・ポールともやって楽しく倒した。こういうエキシで」「天心戦って3Rでいいの? 遊ばないでいいと言われたので1Rで倒しました」「今度のエキシはRIZINがお金を払ってくれれば8Rでもやるよ」「相手(朝倉選手)の試合を見るまでもない」
選手からすれば、屈辱ではないでしょうか。MMA選手として、このエキしに何のメリットがあるのでしょうか。朝倉選手もクレバーなのでMMA選手としてメイウェザーと対戦したのはマクレガーと2人目と公言出来る事もアリと考えているかも知れません。が、今回は繰り返しますがエキシビジョン。世界の格闘技ファンが、世界のプロモーターがこのエキシをどう評価するのか。恐らくメイウェザーがこなしてきたうちの一つと捉えるでしょう。
メイウェザーは、エキシビジョンの楽しさを伝えると言っていました。であるならば、ボクシングの素晴らしさ、楽しさを伝えたいのなら、野球で言えばイチロー氏のように、ボランティアで子供たちに教えればいいのではないのではないでしょうか。そう考えると大変矛盾したメイウェザーの記者会見でした。
9月に試合ならぬ「練習」が見られるようですが、真剣勝負こそ格闘技の価値がある。これは永遠に変わらぬテーマであり、真剣勝負に勝つために選手たちは身体と生活を賭けて戦っているはず。と、考えるとこの試合をする意義が分かりません。ただし興行、プロモート、アメリカでのコネクション作りなど外枠を埋めるビジネスとしてのエキシビジョンだということはうっすらと理解しましたし、もう少し深い事情がありそうなのも分かってきました。(文@久田将義)