「CDに焼いておいて」 もう誰も知らないビジネス用語について考えてみた

1997(平成9年)年に新入社員になった私にしても「ゼロックスしといて」や「テレックス送っといて」の意味はよく分からなかった。前者は「コピーしといて」の意味だが、コピーはコピーであり、当時のコピー機メーカーはキヤノンもリコーもあるわけだからピンとこない。テレックスは当時海外とやり取りする社員は使っていたが、ビジネスで使うものだからそれまで学生だった私にはコレもなんだか分からなかった。

あとは「Mac屋さん」も分からなかった。私が会社に入る数年前、部署内には「Mac屋さん」という外注従業員がおり、社員が手書きで書いた企画書をMacintoshの「クラリスワークス」という今でいうところのパワーポイントのようなソフトできれいに清書してくれていたのだという。

だが、1997年、全社員にPCが支給され、その直前に「Mac屋さん」は仕事を追われた。しかし、自らパワーポイントの資料を作れない50代社員は、「あぁ、昔はMac屋さんに頼めてラクだったのに……」と嘆息するのであった。

まぁ、2000年頃に定年退職し、後は仕事をしていない高齢者にしても令和の時代に当たり前なビジネス用語である「Slackでやり取りしよう」「ZoomのURL送るんで」「ドロップボックスに入れといて」「クラウドに上げといて」などは分からないかもしれない。

いずれにしても今の若手社員にしても、あと10年もすれば、その時の新入社員から訝し気な目で見られ「今の意味なんですか?」と聞かれることになるだろう。(文@中川淳一郎 連載「俺の平成史」)