日本と朝鮮半島を海底トンネルで結ぶ!? 統一教会が作ろうとした「日韓トンネル」 

●トンネル建設の歴史

地理的にそう遠くない距離にある朝鮮半島とのあいだにトンネルを作る計画は何も統一教会が最初に始めたわけではない。1930年代に日本政府が「日韓トンネル」を構想し、建設すべく動いている。戦後のように南北に分断されていなかった朝鮮半島、そして日本の傀儡国だった満州国や樺太といった当時の日本領のあいだをトンネルでつなげて鉄道で結び、大陸進出の足がかりをつくろうとした。日本は大陸に資源を求め、戦争を遂行しようとしたのだ。日韓トンネルに関しての具体的な動きとして、1938年には予備実施調査が始められているし、1941年には九州や対馬でボーリング調査が実施されている。その後、戦局の悪化により、地質調査は取りやめられ、計画は頓挫している。

削岩あとだろうか。

40年後の1981年、統一教会の文鮮明が「国際ハイウェイ構想」を提唱する。それは日本、朝鮮半島、中国をトンネルや鉄橋で連結し、ゆくゆくは全世界に通じる自由圏ハイウェイを建設しようという、壮大なものだった。

「世界の経済が統合されるにつれ、広範な経済の発展が可能となり、人々は皆豊かな生活を営み、大部分の時間をレジャーに費やすようになるでしょう。(中略)私は、すべての人々が真の生活を楽しむ理想世界が、必ず来るということを確信しています」(国際ハイウェイ建設事業団『日韓トンネルプロジェクト』世界日報社/1993年より)

文鮮明が作り上げようとした「理想世界」、その建設の第一歩がこの日韓トンネルのプロジェクトだったのだ。
1986年、教団は現地法人を作り工事に着手するもその後の進捗は芳しいものではなかった。工事開始からすでにかなりの年月が経過したというのに、まだ600メートルしか掘り進んでいないのだ(2008年時点)。

いったいどういうことなのだろうか。「社長」が「訊けばいい」と口にした日韓トンネル研究会に、後日、電話で話を訊いてみた。

「当時は統一教会が現地法人を作ってプロジェクトをすすめていました。プロジェクトが長くなるにしたがって興味を失っていったようです。資金難も問題でした。日韓トンネル研究会がNPO法人として認定された2004年よりも前に教団との関係は清算されています。研究会に教団の人間はいません。資本面でも人材面でも関係がありません」

監視カメラもばっちり。

電話に出た男性は丁寧でフランクな話しぶりで答えてくれた。

「活動資金は寄付で成り立っています。内閣府のHPを見ていただければ資金の流れが確認していただけます」
統一教会とは関係のない新体制で再スタートを切ったということらしい。大日本帝国政府、統一教会が手がけ頓挫した計画が、三度目の正直でいよいよ実現するのかもしれない。電話での話しぶりに期待が持てるような気がした。しかし事務局の活動体制に話が及ぶと、期待はもろくも崩れ去った。トンネル建設はまだ「絵に描いた餅」の状態であることが薄々わかった。