「ブレないインタビュアー」吉田豪著『帰ってきた 聞き出す力』(集英社)

「聞き出す力」は人として必要なコミュニケーション力でもある。

僕の知己に某国立大学でコミュニケーションを教えている人間がいるのですが、著者である吉田豪君の(付き合いが長いので「君」づけでご容赦を)『聞き出す力』を参考にしていると言います。すなわち聞くということは、当然コミュニケーション力の有無につながってくる訳です。大学で教える際のテキストになっているのか、とちょっとした驚きとともに、学生にとっては著名人がたくさん出てくる本なので読みやすいのだと推察します。

聞きだす力とは何なのか。この本から何が読み取れるのか。というキモに入る前に、柔らかいテーマから。

まず、久々に読書中に声を出して笑ってしまいました。ネタバレしないように皆さんに伝えると、前段に俳優・松方弘樹さん、前人未到の400勝投手金田正一さんらの過去本の引用が掲載されているのですが、下世話&無邪気過ぎてあ然を通り越し、笑いをこらえきれませんでした。今は絶対、掲載できない対談です。批判的に言うならば、これで笑う僕もいわゆる「価値観のアップデート」が出来ていないのかも知れません。

ただ、一方で「これで良いのでは」という想いが、松方さんや金田さんについては感じる所があります。不愉快な思いをする女性もいるであろうことは推測できます。が、もう一歩踏み込んで考えると、彼らの言葉には「人間臭さ」があるのです。

本書に掲載されている通り、筆者は「興味がある人間しかインタビューはしない」主義です。なので、いわゆるサブカルやアイドル、プロレスラー、漫画家といった人たちへのインタビューが多くなるものの、何と野球がアメリカで誕生した以来の天才野球選手と言ってよい大谷翔平選手にもインタビューしているのです。彼の人間臭さを引き出せるのか―ー。

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