ニューヒロイン「Rain Tree」17人に幸あれ
歓喜と試練のメジャーデビュー
その瞬間、メンバーの何人かから「珠」のような涙が流れました――。
2025年1月、キングレコードよりメジャーデビュー決定。バックスクリーンにその文字が踊り出た時、ステージ上の17人は涙しました。確かに嬉しいには決まっています。が、彼女たちのここまでの道のりを考えると、その涙にはワケがあると思うのです。そして、壇上で流した「第二の涙」のワケも。
秋元康・総合プロデュースIdol 3.0 projectでは新たなアイドルを生み出すため、半年間のオーディションを経て、11人が選ばれました。彼女たちは「WHITE SCORPION」として2023年10月に『眼差しSniper』でデビュー。現在、6thシングル『動く唇』が披露。ダンスとパフォーマンスのキレは新人らしからぬ大物感を出しています。そしてステージ上では、独特の存在感を示しつつあります。
そのWHITE SCORPIONにセレクトから漏れたけれど、最終審査まで行き、文字通り「FINALIST」という名前で今年の猛暑の中、各地でパフォーマンスを繰り広げてきました。メンバーは17人。オリジナル楽曲『命しか捧げるものがない』を都内近郊で披露してきました。
まだデビューしていないにも関わらず、酷暑・猛暑でのパフォーマンス。そして、「もはやプロ」として認識せざるを得ないのが2024年8月18日「有明ガーデン」でのトラブルでの対応でした。2倍速で『命しか捧げるものがない』かかりました。サビの前で停まりましたが、ここまでを2倍速でダンスをする17人。リスタートしますが、今度はサビで音が止まってしまいます。17人はどうしたか。アカペラで歌い続けました。デビューしていないにも関わらず、そのプロ根性にネット上では拍手されています。
ステージ上では、笑顔で「びっくりしたー」と話し合うメンバーたち。当時の様子をメンバーのタマは
「音源では得られないものが生歌にはあるなって、他のアイドルの方を観ていて思っていました。熱量や想いがちゃんと乗るじゃないですか。それが伝わりやすいパフォーマンスにはなったと思うんです。けど……やっぱり初披露だったので悔しい部分はありました。」と幣サイト「TABLO」で語っています。(涙を勇気に変えて 「FINALIST」『タマ』インタビュー「王道を歩いていきたいです」 | Page 2| TABLO)
こういった「17人で何事も乗り越えていこう」という姿勢は、見ている側にも伝わっていたでしょう。
そして2024年10月8日に、とうとうキングレコードよりメジャーデビューが発表されました。冒頭の涙の描写はこの瞬間です。挫折から立ち上がり、1年間を実は不安の中で過ごしてきた17人。歓喜の次には試練が待っていました。楽曲は選抜制をとるというアナウンス。メンバーの表情やコメントも「17人で歌えるものだと思っていた」といったコメントがなされました。「第二の涙」です。
この「歓喜と不安」は、当時のAKB48を追想させました。名物となった「AKB総選挙」も大きな選抜制です。ステージでは、順位が上がって笑顔のメンバー。下がって涙を流すメンバー。悲喜そのものを、ファンの前に出していきます。ここが従来のアイドルと異なる点でした。過酷と言う人もいました。が、逆にその努力を支えようとファンの推しが支えにもなったと言えます。順位発表で号泣した、あるメンバーは「良い経験だった。今のメンバーにもあの経験は味わっても良いのではないか」とも語っています。
AKB選抜を彷彿させるのであるならば、あの頃のマインドを持った新しいファンがこのRain Treeを推す可能性は多いにあると感じました。