藤圭子の最期で思い出す…ある大物芸人との悲しい共通点
「藤圭子が飛び降り自殺したらしいよ」
大勢の報道陣に混じって、昼の休憩中だろうサラリーマンたちが、そんなことを囁き合っている。
8/22の朝、歌手の藤圭子が西新宿の自宅マンションから飛び降り、搬送された病院で息をひきとった。
一時代を象徴した歌手であり、宇多田ヒカルの母親でもある彼女の訃報に、日本中が騒然とした。
自殺現場は僕の住むアパートのすぐ近く。昼過ぎには、見慣れたマンションの周りはマスコミ関係者でたいへんな騒ぎになっていた。
建物裏手の道路には、血痕を拭うためだろうか、大量の水を流した跡がある。黒く濡れたアスファルトを、かがみこみながら接写するカメラマンたち。
そんな現場に佇みながら、僕はふと、あることに気が付いた。
2005年、ポール牧が自殺したマンションも、ここのすぐ近くだった。直線にしたら100mほど、通りを一つまたぐほどの距離しかない。
現場の近さだけではない。藤圭子とポール牧の死には共通点が多いように思える。
どちらも自宅マンションからの飛び降り自殺であり、長年にわたって精神的な病に苦しんでいた。
そのストレスからか、両者ともアルコールに依存する生活を送り、金銭トラブルが続いていた。さらには離婚などで、家族とも離ればなれに暮らしている状態だったのも共通している。
そして自殺時の年齢も、藤圭子が62歳、ポール牧が63歳とほぼ同じだ。
時代を1980年代にまで遡れば、沖雅也もすぐ近くのホテルから、岡田有希子も新宿区にあるサンミュージックのビルから、飛び降りによって亡くなっている。二人ともまだ若く、仕事のキャリアもこれからという最中での出来事だった。
もちろん彼らの死も衝撃的なものだが、藤圭子とポール牧の自殺には、また違った悲しさがある。
かつて一世を風靡した二人が、老齢にさしかかった時点で、長く続いた苦悩から死を選んでしまったという悲劇。
二人の死の現場がわずかな距離しか隔てていないという偶然が、いっそう痛ましさを増しているように思えるのだ。
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Written by 吉田悠軌
Photo by 藤圭子 GOLDEN☆BEST/BMG JAPAN
たくさんの名曲を世に残してくれました