冤罪を招いた足利事件と横山ゆかりちゃん事件に共通する「ニッカポッカの男」は誰だ|八木澤高明
事件現場(筆者撮影)
栃木県足利市を流れる渡良瀬川の河原で、松田真実ちゃん(4歳)の遺体が発見されたのは、1990年5月13日午前10時20分頃のことだった。
河原に生えたアシの茂みに頭を突っ込むように遺体は投げ捨てられていた。さらに真実ちゃんの赤いスカートやTシャツ、サンダルなどが遺体発見現場からほど近い場所で見つかった。衣服には犯人のものと思われる精液が付着し、遺体の首には絞められた跡があった。
事件から1年半後、菅家利和さんが逮捕されるが、DNA鑑定により無罪が証明され、2011年に釈放されている。警察の杜撰な捜査に批判が集まったのは記憶に新しい。
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真犯人は今もどこかに息を潜めているわけだが、事件発生前から松田真実ちゃんが連れ去られたパチンコ店の周囲では、不審な男の姿が目撃されていた。
事件発生の前日にもパチンコ店に隣接する幼稚園のまわりを身長165センチほど、丸顔、無精ひげを生やし、作業ズボンを履いた男がうろついているのが目撃されている。この男は1年ほど前にも幼稚園を訪れて、園内を覗きこんでいたという。
真実ちゃんは殺害された日の午後6時半頃、パチンコ店を訪れ、父親がパチンコをしている間に、何者かに連れ去られた。パチンコ店からほど近い渡良瀬川の河川敷を40代の中年の男と幼女が歩いている姿を、ゴルフをしていた男性が目撃している。おそらくそれが真実ちゃんと犯人の男だろう。パチコン店に現れた男と真実ちゃんと一緒に歩いていた人物が同一人物なのか。
足利事件から6年後には群馬県太田市内のパチンコ店から、横山ゆかりちゃん(当時4歳)が連れ去られた。彼女は未だに行方不明である。この事件でもパチンコ店の防犯カメラに、身長158センチ前後で、ニッカポッカを履いて、パチンコをするでもなく何かを物色するように歩く男の姿が防犯カメラに映っていた。
他の角度から映された映像には、ゆかりちゃんと長椅子で話し込む姿が映っている。足利事件と横山ゆかりちゃん事件、作業服姿の男が両事件の重要参考人である。
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私は松田真実ちゃんが連れ去られたパチンコ店や、遺体の発見された河原を歩いてみた。パチンコ店はすでに潰れていて営業していなかった。犯人と思しき男が中を覗いていたという幼稚園は今も変わらずその場所にあって、子どもたちの笑い声が通りまで響いてきた。
事件から、30年近い年月が経とうとしていて、真実ちゃんが生きていれば、彼女も今頃幼稚園に通う年代の子どもを育てていても何ら不思議ではない。そう思うと何ともいたたまれない気持ちになってくる。私は足早にその場を去った。
遺体が発見された場所は、今も当時とはほとんど変わらず、渡良瀬川が流れ、時おり吹き水面を渡っていく風が、名知らずの派手な黄色い花を揺らしていく。自然と生えた花が真実ちゃんの墓標となっていた。(取材・文◎八木澤高明)