南青山児童相談所設立予定地
私は3年ほど前まで、南青山の公立小学校の校庭を借りて行う小学生のためのスポーツクラブの監護係を務めていました。このスポーツクラブは小学校の部活動ではなく、民間の団体に委任した専門のコーチが小学生たちに駆けっこや幅跳びなどを教える教室のようなものです。平日の早朝に開かれ、自由参加ですが、件の公立小の児童に人気があり、毎朝、多いときでは50人以上も集まって楽しそうに運動していました。
同校の一生徒だった私の子どもが参加したことが、私が監護係になるきっかけでしたが、当時、彼らの姿には本当に癒されましたし、参加児童の保護者の方々との触れ合いも日々の楽しみのひとつになっていました。
コーチは外国籍の方で、スポーツクラブの生徒の中にも外国人子弟が何人かいました。
人種や国籍だけでなく、保護者の職業もさまざまでした。会社員、看護師、介護士、地元の個人商店経営者......私や夫のような自由業・自営業の人もいました。
この住民の多様性が南青山の特色で、独特の寛容な土地柄を形成していると......私は、前職のせいでともすれば差別的な扱いをうける身であるからこそ、長らく信じてきました。
つい最近、「元セクシー女優の子どもは苛められる」といった憶測とも元セクシー女優への批難ともつかない意見がSNSで飛び交い、話題になりました。
しかし、うちの息子は、私と夫がいわゆる「顔バレ」をしていたにもかかわらず、南青山では、まったく苛められませんでした!
報道された、自称"建設反対派"住人の差別的で狭量な発言は、南青山の住人らしくないと思いました。
また、南青山について、「セレブ」だの「ブランドイメージ」だのといった馬鹿々々しくもきらびやかな形容がマスコミによって繰り返し流されることにも、一住人として大きな違和感を覚えました。
昭和の面影を残す路地
私たちが暮らす南青山は、コンビニエンスストアと全国どこにでもあるスーパーマーケットチェーンの「イオン」、特売のお菓子と日用品を店先に並べた薬局や、銭湯とコインランドリー、手作りの豆腐を作りつづけている小さなお豆腐やさんのある、南青山です。
お寺の夏祭りに子どもたちが小銭を握っていって屋台で買い食いをする町、お母さんたちが幼い子と二人乗りした自転車が歩道を走り、小学生たちが賑やかに登下校する路地の町です。
私が出欠を確かめたり転んだときに絆創膏を貼ってあげたりしたスポーツクラブの子どもたちも、保護者の皆さんも、南青山で暮らしています。私も外国籍のコーチも歓迎してくれた人々が、いろんな国の子、いろんな親の子を、包み込んでくれた人々が住んでいるのは、そういう南青山です。
反対をしている人たちの正体
この南青山の住人は、港区から積極的に「港区子ども家庭総合支援センター(仮称)」建設計画の説明会への参加を呼びかけられていません。
建設計画の説明会は3回行われましたが、現時点まで、私の家にも、知る限りの南青山の知人宅にも、港区からの公式なお知らせだとはっきりわかる形では、メールもチラシも1回も届いていないのです。
私も、近所の知人たちも、10月中旬に行われた2回目の説明会のもようが報道されたり、Twitterで南青山叩きが始まったりしたのを見て、件の建設計画と説明会について初めて知りました。
まさに「寝耳の水」というか「寝耳にdis」とでも言いたいような事態です。
お陰で、戸惑いながら、久しぶりに港区のホームページを開いて、この建設計画について確認してみた次第です。
すると、建設が予定されているのは「港区子ども家庭総合支援センター(仮)」といって、児相と母子保護施設を設置すると同時に、「子ども家庭支援センター」という「子育てをテーマにした多様なイベントの開催」や「子育てを支援する人のネットワークづくり」を行い、近隣の親子が気軽にイベント参加や育児相談に訪れることが出来る設備をも兼ね備えた、複合的な子育て支援施設だということがわかりました。
南青山地区には、公立の保幼小と児童館があり、子育て世帯が多いのです。
左が南青山児童相談所設立予定地
ところが南青山の親子に長く愛されてきた子育て支援と遊び場の「こどもの城」が近年閉鎖されてしまい、子育て支援と室内遊びの場「あい・ぽーと」は保幼小がある住宅街の中心部から遠い外苑前駅付近にあり、子育て支援を必要とする保護者にとって不便な状況が続いています。
ですから、この度計画されている総合的な子育て支援施設は、南青山の住人から歓迎されこそすれ、反対されることは無いのではないでしょうか。
実際、先頃(12月21日)、南青山町内会では住人の新旧を問わず満場一致で「港区子ども家庭総合支援センター(仮称)」建設計画に賛成だったという情報がTwitterで流れてきました。
それによると、南青山の町内会では、「反対意見を述べている人々は南青山の住人ではない」と言っているということです。
私は、港区子ども家庭総合支援センターの、児相や母子保護施設と「子育て」を隔てない画期的なコンセプトにも共感しました。考えてみれば、本来、児相等と「子育て」は地続きのものです。
児相や保護を求める母子を、あたかも病人か何かのように一般的な子育ての概念と区別する、そんな差別的な考え方には、私は絶対に与したくありません。
偏った報道により住民の間にも誤解が広がっていると思いますが、今回計画されている施設は、南青山地区の文化資本と人材を総動員して盛り上げていくべきものでしょう。児相を優しく包摂した素晴らしい施設になる可能性があると思います。
南青山住人として、今回の港区の取り組みを誇らしく思います。港区子ども家庭総合支援センター(仮称)を応援します。(文◎川奈まり子)
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