サモ・ハン・キンポーといえばデブゴン。おじさん世代は即答しますよね。『燃えよデブゴン』が香港より遅れること3年後、1981年に日本で公開されて以降、あのすげぇ敏捷なデブが魅せる本物のカンフー映画が次々と上陸(ビデオだけのも含めて)、邦題がことごとく「デブゴン」。
やがて彼はハリウッド進出を機にキンポーを外してサモ・ハンに改名し、アクション監督としてもウォン・カーウァイの『楽園の瑕』、チャウ・シンチーの『カンフーハッスル』、ドニー・イェンの『イップ・マン 序章』といった世界中の香港映画マニアを熱狂させた傑作に関わり名を馳せた。
ジャッキー・チェンやユン・ピョウらと共にカンフーの基礎を学んだ中国戯劇学院での自身の少年時代を描いた映画『七小福』に師範役で出演したサモ・ハンは、香港のアカデミー賞こと香港電影金像奨で最優秀主演男優賞を受賞。演技派の俳優としても花を咲かせ、なおかつ50歳を過ぎても『SPL 狼よ静かに死ね』『イップ・マン 葉問』で堂々カンフー・スターとして主演。
そんなサモ・ハンがいま再び「デブゴン」を見せてくれるのです。御年61歳の彼の去年香港で公開された主演作『ネイキッド・ソルジャー/アジア大捜査線』( http://nakedsoldier.ayapro.ne.jp/)です。
サモ・ハン扮する刑事が麻薬組織を摘発、それを恨む女殺し屋組織が彼の家族を皆殺しにし、愛娘をさらう。彼の幼い娘は組織によって立派な殺し屋として育てられる。時は過ぎて、サモ・ハンと娘は警官と殺し屋として対峙! という生き別れ&再会物語でもあるのですが、見どころはもちろんカンフーです。
セクシーな美人の殺し屋が3人4人と出てきてマッチョ男より強いところも香港映画ならでは。そしてサモ・ハンのモードはひさびさ「デブゴン」。
物語が深刻になるにつれてどんどんアクションはユーモラスなものになるという、香港映画好きのツボ突きまくり、うわーサモ・ハンは80年代の古き良き香港映画テイストをリスペクトし僕たちおじさんに提供してくれるんだぁ、と感動すること必至でありましょう。
この映画が素晴らしいのはポルノ映画における「濡れ場」すなわちカンフー映画におけるアクションシーンの多さ、武術の使い手もいっぱい出てくるゆえのバリエーションの豊かさ。近年の香港のアクション映画の中でもココがダントツなのです。
僕が配給元の担当者ならば邦題を『デブゴンVS女殺し屋軍団』にしたかもしれません。
『ネイキッド・ソルジャー/アジア大捜査線』は11月23日(土)シネマート六本木ほか全国順次公開です。
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Written by 沢木毅彦
Photo by 燃えよデブゴン/正義への招待拳/パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
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