12月6日、両国国技館でボクシングの注目の試合が行われました。"怪物"井上尚弥が世界前哨戦とも言えるOPBF(東洋太平洋)タイトルマッチを行い、WBCフライ級王者の八重樫東が最強の挑戦者を迎えた防衛戦......と見どころの多い大会でした。
しかし、何といっても再注目はオリンピック金メダリスト、"ゴールデン・ボーイ"村田諒太のプロ第二戦でしょう。テレビ中継も「村田推し」の構成になっていましたね。
村田選手は前回のデビュー戦では東洋太平洋王者の柴田選手を相手に圧勝。同じ日本人の柴田選手にはフィジカルで圧倒していた面もありました。金メダリストの実力を見せつけてくれました。
二戦目の対戦相手、アメリカ人のデイブ・ピーターソン選手は14戦13勝1敗。ダウンしたことがないというタフな選手です。世界を目指す村田選手には勝敗よりも勝ち方や試合内容が問われる相手です。正直、ここで躓いていたら世界タイトルは見えてこないでしょう。
では試合を振り返ってみましょう。デビュー戦と同じく『パイレーツ・オブ・カリビアン』のテーマ曲の流れる中、上半身裸の臨戦態勢で笑顔を浮かべながらの入場。この入場曲は村田選手のスケール感に合っていると感じます。
[1R]
しっかりとガードを固めながら思いパンチを打ち込みプレッシャーをかけていきます。時々ビンタするようなオープンブローが見られ若干荒いかなという感じがしますが村田選手のパワーは凄いです。
[2R]
相手の肩越し、ガードの内側と右ストレートを打ち分けてプレッシャーをかけ続けていきます。途中ラッシュもかけて見せ場も忘れません。
[3R]
ピーターソン選手が手数を増やし村田選手はやや手数が減ります。村田選手もガードした後にしっかりとパンチを返してペースを取らせません。
[4R]
ピーターソン選手はサウスポーにスイッチして更に手数を増やします。途中タイミングのいいパンチが村田選手にヒットしますが終盤には強いパンチを返して終わる。この辺りはさすがですね。
[5R]
得意の右ストレートのクリーンヒットをきっかけにラッシュ。あわやダウンダッシュか?という場面を作るもピーターソン選手は上半身を柔らかく動かしてパンチを殺して決定打を許しません。
[6R]
村田選手が変わらずプレッシャーをかけていきます。ピーターソン選手は苦しいのかスイッチの回数が増えてきました。
[7R]
倒しにかかる村田選手に対してのらりくらりと上手くいなすピーターソン選手。ピーターソン選手はタフな上に上手い。
[最終8R]
このままいけば村田選手の判定勝ちは間違いないでしょうがKO勝ちを狙いに行く村田選手。プロを意識しているのでしょう。パンチのラッシュでスタンディングダウンを奪い、その後もラッシュしてレフェリーストップ。少し止めるのが早かった気がしますが見事なTKO勝ちでした。
初の長丁場(アマチュアは最大3R)でのKO勝ち。最終ラウンドにラッシュをかけてのTKO勝ちというのは村田選手にとっていい経験になったのではないでしょうか? 上半身の固さとデフェンスがガード一辺倒なのが今後の課題でしょうが、それを補って余りあるパワー。対戦相手のピーターソン選手が柔らかい「柔」の選手だったので村田選手は特に「剛」という感じがしました。他のスポーツでもそうなんですが外国人選手は同じ体重でも日本人と違ってパワーが有ります。パワーで圧倒している日本人選手はあまり思いつきません。そのためどうしても他の分野、スピード、スタミナ、テクニックという面で勝負しなければなりません。
しかし村田選手には日本人離れしたパワーがあります。まさに規格外。対戦相手をパワーで圧倒する「剛」の世界チャンピオンになってもらいたいものです。
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Written by 大野崇(プロキックボクサー・元K-1 JAPAN選手・トレーナー)
Photo by 101%のプライド(幻冬社)
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