TOKIO謝罪会見　なぜジャニー喜多川社長の名前がほとんど出なかったのか｜平本淳也

「ジャニーズ流を貫いたTOKIO謝罪記者会見とジャニーズ姉弟の支配力の低下｜平本淳也」からの続きです

ジャニーズ事務所

　印象的だったのは質疑で「日刊スポーツ」がジャニーさんを取りあげたときだ。世間の注目が集まるとき、必ず「建て前」が用意されるジャニーズの会見では、どこかかで登場する「神的存在」のジャニーさん。その応答によって事あるごとに「ジャニーさん」や「社長」を呼称しながら立場を立てて感謝の意を唱える場面はＳＭＡＰ解散時にもよく聞いたが、今回の事件については「ジャニーズ最大の危機」といっても良いくらいの事件であることから、どのように登場するのか興味があったところだ。

　ジャニーズ事務所としては「簡素で説明にもなっていない文書」を発表していたが、会見の場が準備されるとまずはジャニーさんのコメントをニュースとして発信。ここに「絆」を醸し出して関係の深さをアピールするとともに、メンバーたち本人の口から謝罪させるといった場面になっているのはやはり不思議ある。どこぞの企業の不始末なら大手企業でも代表が頭を下げることも少なくないが、ジャニーさんは立場が守られているかのようだ。

　メンバーたちは会ってもいない訳でこの会見の場に代表が来ることもない。会見の質疑で「今日、ジャニーさんは来られないのか？」とか「代表はどこで何をしているのか？」とか挙手して訊ける勇気ある記者が一人もいないのは、この会見の場は選定された媒体のみが来ているからである。こういったところでも「ジャニーズの力」は相当に強いもので、その影響力には衰えを感じないところだ。

　だからこそ「事件の発覚」と同時に報告していればという悔やみもある山口だが、コントロール出来なかった時間から起死回生させるには山口を切って責任の所在を世間に納得させるしか方法がないだろうと考える。このような展開となってしまったところだがＴＯＫＩＯの解散は現実的ではない事情が多々あり、わかりやすく言えば解散より存続のほうが簡単なのである。

　それでも負った傷はかなり深いジャニーズである。国民的だからこそ大きな責任と課されるが、担っている仕事や幅も深さも中小企業の中以上にあるＴＯＫＩＯの稼働を止めるわけにはいかないし停止は容易ではない。また事務所から解雇や解除というのは簡単だが本人の意志によって責任が取られれば、関係各位にとって都合が良い結果となりうる。

　どこぞのセクハラ官僚のように5千万円の退職金や証人喚問を回避するための小細工もないこの方法は、世間への説得と納得、そしてＴＯＫＩＯメンバーたちへの同情と擁護も同時に得られる上手なやり方だと感じたのは僕だけだろうか。世間的に「当たり前だ」と言われたらそれまでだが、こういった時(責任の取り方など)にも「自由」がないのが芸能人だということを言いたい。即答はせず、あくまでも謝罪と説明の会見であることで、辛うじてＴＯＫＩＯは存続となった。これはひとえにジャニーズの強さの賜物だと感じる。

　山口事件で色んな事を思い出したが、会見と言えば『ビッグ発言』でメディアから干されたとされる田原俊彦、そして『酒』と言えばジャニーズでは間違いなく少年隊の錦織一清である。その危険性は山口の比ではなく、裏方を担っているという建前で現在は表舞台に出られないほどのものだ。「素面(シラフ)でバック転できねーよ！」という珍発言が忘れられない。

　田原俊彦については「女癖」も相当で共演者として弟分としても交友があった野村宏伸さんが「ついていけない」とし周囲に漏らしていたことも思い出す。「女と酒と会見」で表舞台から消えていくのは山口が特別ではなく「よくある話」で、事件こそ表に出ないがこの程度の事情は多数存在している。それが噂であっても「表」に出ればその時はまたいくらでも綴って見せよう。(文◎平本淳也)