「ゲス川谷懺悔告白」や「ショーンKの嘘」が話題の週刊文春(3月24日号)の巻頭特集は「保育園落ちた政局 自民ヤジ議員を連続直撃!」だった。
衆院予算委員会で「保育園落ちた日本死ね」のブログが取り上げられた際、"本人連れてこいよ" "出典はどこだ" のヤジを飛ばした議員を探し当てて直撃している。誰がヤジを言ったのか顔を見たいという、それこそ「匿名」が気になっていた読者の欲望にこたえる下世話でいい企画。これにプラスして保活地獄レポも。
さて、この特集を読んで「飯島勲の激辛インテリジェンス」という連載コラムを読むと「読みごたえ」が十分なのである。飯島勲氏とは小泉政権の首相秘書官だったあの人だ。現在は特命担当の内閣参与。飯島氏の連載でも「保育園落ちた政局」をとりあげているのだが、
《安倍内閣は懸命に保育所の受け入れ体制を拡充しているけど、供給を増やすと「ウチも子どもを預けたい」需要も掘り起こしちゃう。》
《おまけにアベノミクスによる景気回復で、それこそパートも含めて働きに出る女性が増えたから、待機児童が減るどころか増えちゃう。何とも悩ましい状況よ。》
保育園落ちたブログに関しては、
《自民党も大人の対応すりゃいいのに、どこの馬の骨か分からない匿名だからって、文章をフリップで見せるのを拒否したらしいね。》
ヤジを飛ばした平沢勝栄議員はワイドショーで「これ、本当に女性が書いた文章なんですかね」と言ってさらに話題になった。あのブログは、言葉づかいや匿名という点より圧倒的な共感を集めていることのほうが「問題がある」とふつうは思うのだけど、飯島勲にしろ平沢勝栄にしろ、おじさんは匿名ということがやっぱり気にいらないらしい。
私が気になるのは飯島勲の「立場」である。実はこの飯島氏のコラムや出版物をチェックすると、安倍首相に近いようでホントは遠い? と感じることがあるのだ。
飯島氏の「政治の急所」(文春新書・14年1月)では、北朝鮮拉致問題について「内閣参与である私自身ができる限りトップに近い北朝鮮高官と直接、会談する。そして日本のスタンス、安倍首相から直接、伝えられた基本方針をビシッと話す。ここまでやらなかったら意味がない」と書いていた。つまり、オレみたいなトップクラスが行かなきゃ事態は動かないと。
で、このあと14年3月に横田めぐみさんの両親がモンゴルで横田めぐみさんの娘キム・ウンギョンさんと面会すると、飯島参与は「外交カードとしては、失敗の策かもしれない」とコメントしていた。
私はこの飯島参与のぶ然としたコメントの意味は「面会の件は、飯島参与には一切知らされていなかった」、「反対したのに意見を聞いてもらえなかった」、「自分の持っている北朝鮮のルートと別だからおもしろくない」の3点ではないかと想像した。
その数カ月後の14年の7月、文春の飯島氏のコラム(7月17日号)はこんな出だしから始まる。
「政府が北朝鮮への独自制裁の一部を解除したな。」
「ま、オレはカヤの外から眺めてるだけだけど」。
そして自分も随行した小泉訪朝の話を書き、十八番の小泉時代の思い出話を書き進める。本人も書く通りまさにカヤの外感がたっぷり。
文春によれば自民党は今回の保育園ブログのヤジ問題について火消しに必死だというが、その文春のコラムで飯島氏は「どこの馬の骨か分からない匿名」と憎しみすら感じる表現で切り捨て、かなり「余計なこと」をしている。で、ひたすら黙殺されている。
飯島氏の特命参与という役職は、口うるさいおじさんをとりあえず中に取り込むためだけの目的で、もしかしたらお飾りなんじゃないだろうか。
そんな自分の立場をうすうす気づいている飯島氏にとって、文春のコラムは政権への援護射撃のつもりだろうか、先方からすれば余計なことばっかり言っている感じなのだ。
これもひとつの「文春砲」である。
Written by プチ鹿島
photo by 秘密ノート〜交渉、スキャンダル消し、橋下対策
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