昨今の世界情勢を大きく揺さぶる北朝鮮指導者、金正恩の言動。
その予測不可能な彼の言動に大きく生活が左右されるのは、北朝鮮国民に他ならない。そんな北朝鮮国民の実態、北朝鮮にも裏社会があるのかという論点でデイリーNKジャパン編集長・高英起(コウヨンギ)氏と、潜入ライター・ニポポ氏の対談番組がニコ生公式放送にて公開された。
番組上では冒頭より金正恩の言動に朝鮮総連幹部も右往左往しているという情報がニポポ氏から語られると、高英起氏は「イメージが先行しているが、北朝鮮と朝鮮総連は別に繋がっていない」と実際には何も情報をもらえていない状況であるとし、さらにスリーパーセル問題にも言及。
その現実味の低さを「体制が崩れたらそもそも彼ら、すぐ寝返りますよ」と指摘し、該当の発言については「公安も頭を抱えている」と裏事情を語った。
朝鮮総連本部ビル
そしてテーマは本題である北朝鮮アウトローという切り口に。
まずは日本のヤクザ、欧米のマフィアといった組織だったアウトローが北朝鮮内にもいるのかという問題だが、この点については大半の組織は90年代以降潰されてしまったという。
その代り発見や摘発が難しい密貿易に汚職、賄賂といった国外と通ずるシノギが盛んに行われているようで、中でも個人間密貿易は北朝鮮経済を好転させる大きな要因ともなっており、高英起氏曰く「北朝鮮では密貿易をやっている箇所を4つ押さえれば、食うに困らないと言われてる。そこからみかじめ料が取れるので。それは逮捕するよりよっぽど割がいいから潰すに潰せない状況」とのこと。
もちろん90年代以降、人数は少なくなっているものの暴力的なアウトロー組織は北朝鮮内にもあるようで、彼らは日本語に直訳すると「拳の世界」という日本で言うところの"任侠道"に近い精神を持っているという。
彼らは中国遼寧省瀋陽市でありとあらゆる裏ビジネスを積極的に行っており、管理売春、ドラッグといったシノギを主軸としている様子。
この流れから北朝鮮国内でのドラッグ蔓延は危機的状況になっているようで、その様子について高英起氏とニポポ氏のやり取りには次のようなものがあった。
高英起:日本にもかつてあったじゃないですか。ヒロポンって。覚せい剤に違法という認識のない時代が。
ニポポ:ビタミン剤じゃ! ってヤツですね。
高英起:そうですそうです。今彼らがその状況なもんで、いけないものという認識自体が無いんですよ。理由も"食べなくても活動できる"という驚くべきものですから。
ニポポ:凄い理由ですね! そうなると罰則もないんですか?
高英起:いえ、金正恩もこれを緊急事態と認識していて、摘発に本腰を入れているんです。
ニポポ:そもそもドラッグは北朝鮮の人たちがお求めやすい価格なんですか?
高英起:反社会グループが潰されまくったことによって、ドラッグ余りが発生していて価格は安いんですよ。
西成の泥棒市で売られている薬。北でもドラッグが蔓延しているという
なお、この金正恩が進めるドラッグ撲滅政策は現在大きな効果を生みつつあるという。
過去に類を見ない経済成長という光が生み出す、アウトローの色濃い影。
彼らの暗躍は北朝鮮内にドラッグ汚染という破滅的な未来を招くのか、はたまた金正恩の一手がこれらを阻むのか。(文◎編集部)
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