香港はデモで“新疆ウイグル自治区化”する? 若者たちの異様な「デジタル断ち」とは|西牟田靖

すでにあるデジタル監視社会というディストピア

しかし、そうとも言い切れない。このような過剰とも思える行動を参加者たちが取ったのは、彼らが中国本土の現状を知っているからであろう。

中国の各大都市にはすさまじい数の監視(防犯)カメラが設置され、当局がやる気になれば、顔認証やIDカードなどの紐付けによって、すばやく洗い出し逮捕するようなシステムが出来上がりつつある。インターネットは金盾(グレートファイアウォール)という情報検閲が敷かれていて、当局が問題視するサイトは見られない。SNSは監視されている。スマホとGPSが紐づいて移動経路やまたは地下鉄などの移動のルートというのもそれこそやっぱり当局がやる気になればすぐに補足できるはずだ。

世界第二位のGDPをほこる中国。その都市部では、今や日本と変わらない、もしくはそれ以上の生活を送ることができる。だが一方でひとたび当局に目をつけられれば、理不尽な理由で逮捕され、ほぼ問答無用で罪に問われる。そのとき今後ますます利用されるはずなのが、上記の監視システムなのだ。

香港ならではのエロ本

中でも、もっともエグい監視体制が布かれているのは西端にある新疆ウイグル自治区だ。

ここ数年、現地では凄まじい監視体制が布かれている。ところによっては50メートルおきに交番があり、夥しい数の警官が街に配置されている。ウイグル人の持つスマホには監視アプリが強制されている。外国に電話すると数時間後には当局から電話がかかってくる。ウイグル人はパスポートを持てず、外国から帰ってきたウイグル人は拘束される。すでに100万人以上の人びとが収容されているという話もある。

そんな絶望的な監視社会が中国の西の端に展開されている。というのもこの地域にはイスラム教徒が多く、反政府デモが多い。そのことから、共産党政府は恐怖でパニックで陥っているのではないかと思えるぐらいの、過剰な警戒体制を布いている。