柴又女子大生殺害事件 犯人による痕跡がこれだけあるにもかかわらず未解決となった“三大コールドケース”の一事件

犯人は、僅かではあるが人物の特定に繋がる痕跡を残していた。ストッキングで縛られた順子さんの両足は「からげ結び」という造園業や土木業、和服の着付けなどで使用される特殊な方法で縛られていた。さらに彼女を縛った粘着テープには三種類の犬の毛が残されていた。順子さんの家では犬を飼っておらず、犬の毛は犯人が犬に囲まれて生活していることをうかがわせていた。

犯人は順子さんを殺害する際に、揉み合いとなり、刃物で怪我を負い、布団やマッチ箱に血液を残していたのだが、科学捜査の進歩により、事件から十八年が経った二〇一四年には、両方の血液から同一のDNA型が検出されたのだった。それは有力な証拠であったが、残念ながら警視庁のデータベース保管されている五十八万件に一致するDNA型はなかった。

順子地蔵(筆者撮影)
順子地蔵(筆者撮影)

柴又女子大生殺害事件が起きた現場は、閑静な住宅街の中にあった。最寄の柴又駅から、現場まで歩いて向かったのだが、当然ながら陰惨な事件を想像しづらい雰囲気に包まれていた。