「100円ちょうだい…10円でもいいや…」 カッターナイフを手にしたこの強盗男は“あなただった”かもしれない
彼が起訴されたのは強盗罪でなく恐喝罪でした。
「駅前で客待ちをしていたら被告人が乗り込んできました。タクシーに乗り込むとすぐ『100円ちょうだい。10円でもいいや。強盗です。』と言われました。見ると被告人は手にカッターナイフを持っていてカチカチ音を鳴らしてしつこくお金を要求されました。車内に防護板はありませんでした。今は思い出して恐くなることもありますが、当時は怖いとは思いませんでした。とりあえず百円玉を手渡すと『交番に行って』と指示されたので言われた通り交番に行きました。だいたい50メートルぐらいの距離です」
被害者が供述する事件の全容を聞くかぎり、『強盗』という言葉から連想されるような凶悪な事件ではありません。人を傷つけたりお金を奪い取ろうとするような意思を感じることもできません。そこにあるのは、ただ捕まりたいという意思だけでした。
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「事件前に酒を呑んでいて事件のことは正直はっきりとは覚えてません。大変なことをしてしまったと反省しています」
証言台でうなだれながら話していた彼は、外見はどこにでもいそうな普通の人でした。今回の逮捕以前に前科も前歴もありません。
「酒は毎日呑んでました。犯行時は普段よりたくさん呑んでしまっていたと思います」
飲酒の影響で普通の精神状態ではなかったようです。
「酒に逃げてしまっていました」
そう話す彼に検察官は問いかけました。
――何から逃げていたんですか?