ホテル女性殺害・高齢者殺人運転・通り魔・飛び降り自殺… なぜ世間を騒がせる事件は池袋で起きるのか

8代将軍吉宗の治世であった享保年間、池袋では追い剥ぎや辻斬り(通り魔)があとを断たなかった。そして享保6年、一晩で17人もの死者を出す辻斬り事件が発生。現場は血の海の中に死体の転がる凄惨なものだったという。それを受けて、池袋四面塔稲荷大明神が建立され、雑司が谷鬼子母神の高僧が供養にあたった。この四面塔は現在も残っており、その場所が今回の事件現場から線路を挟んで目と鼻の先なのだ。表向きと第一義はもちろん死者の供養であったが、殺しの繰り返される土地の「祓い」の意味も大いに込められていたことは想像に難くない。

四面塔からもわかるように、鎮魂や祓いには「塔」を建てることが多い。池袋の塔といえばサンシャイン60が思い浮かぶ。ご存知の通り、あの塔はかつて巣鴨プリズンと呼ばれた旧東京拘置所があった場所だ。ここでは東条英機をはじめとしたかつての英雄が、何人も死刑に処されている。雑司ヶ谷霊園から、このサンシャイン60がよく見えるが、その眺めはまさに墓標そのもので、深層心理で鎮魂と祓いが行われているように感じられるのである。

こんなにも祓いを行なっても、池袋から「死」が剥がれないのはなぜか。

それは同じく池袋という地名から見ることができる。「池」という字から水場であったことが偲ばれるが、一方で「ふくろ」の語源は「ふくらむ」という動詞である。その言葉にはとりもなおさず「増殖」の意味が込められており、前述した通り袋池が水源であったために、ふくらむ(増殖する、湧き出る)池としてこの名がついたことがわかる。

つまり、池袋はたんなる水場ではなく渾々と水の湧く場所だったのだ。古くから現代に至るまで、いくつもの祓いが行われても池袋から剥がれ落ちない「死」の影。それは、今でも多くの人が行き交う池袋のアスファルトの下に湧き出る水から来ているのかもしれない。(文◎Mr.tsubaking)

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