アンジュルムから主要メンバーが3連続卒業 辛い時期を乗り越えた勝田・中西はなぜ今卒業するのか|大塚ナギサ
今回卒業を発表するにあたって、これまでの活動をこう振り返っています。
〈今まで約8年間色んな経験をさせて頂き、大変だなぁと思ったことはありましたが、辛いなぁと感じたことはほとんどありませんでした。周りの皆さんのおかげです〉
アイドルが届けるべきものは辛そうにしている表情なんかではなく、最高の笑顔である。成長の過程が魅力的だからといって、追い込まれるアイドルを見せるべきではない――。そんなこだわりに満ちたアイドル生活を送ってきたのが中西さんなのです。
さて、アンジュルムは1年で3人のメンバーが卒業することとなります。しかも、それぞれがまったく異なる道へ進んでいきます。
アイドルの解釈の幅を広げるためにソロのアイドルとして活動する和田彩花さん、芸能活動は継続しつつファッション関係の仕事に軸足を置く勝田里奈さん、そして芸能界を引退し新たな道を切り開く中西香菜さん。グループ内の多様性を尊重し、メンバーの個性を自由に発揮できる場であるアンジュルムらしい、それぞれの進路だと言えます。
しかし、中西さんと勝田さんについては、発表から2〜3カ月で卒業となり、ファンにしてみれば、心の準備をする期間が短く、少々ショッキングなものであったのも事実です。
あまりにも急展開な卒業には、いろいろな事情もあるとは思いますが、中西さんは〈勝田里奈の卒業をサブリーダーとしてしっかり送り出したかったので このタイミングとさせていただきました〉とコメント。勝田さんも〈皆さんへのご報告は、和田さんが卒業した後にしたいと思っていたので、このタイミングでの発表とさせていただきました〉とコメントしています。
つまり、先に卒業するメンバーの邪魔にならないようなタイミングで自らの進路を発表したということ。その背景には、メンバー愛やらグループ愛というものが、少なからずあったとも解釈できるのです。
アイドルグループというと、メンバー誰もがセンターポジションを狙っていて、バチバチやり合っているというイメージもあるでしょう。しかし、アンジュルムはそうではない。自己主張はするけど、同時に自分以外のメンバーのことを絶対的に尊重する。多様性を認めるということは、他者を認めるということ。それをしっかりと実行しているのがアンジュルムです。
もちろん、多様性を認めるグループなのだから、アンジュルムのメンバーとして活動を続けつつ、自分のやりたいことを追求する、という選択肢もあり得たかもしれない。ただ、それが本当に実現可能かどうかというと、なかなか難しい。自分のやりたいことを優先させると、グループの活動に影響が出て、他のメンバーに迷惑がかかるかもしれない――。そういったジレンマを抱えたうえで出された結論が卒業なのです。
言い換えれば、多様性を認めるアンジュルムの思想を実現し、そのアンジュルムという場を大切にしたいがための卒業だとも言えるでしょう。アンジュルムの思想を信じているがゆえ、アンジュルムを愛しているがゆえの決断に、より一層寂しさがつのるのです。