ラグビーワールドカップに感涙 ラグビーにおけるノーサイドとは何か アイルランドはなぜ日本を花道で送ったのか

ラグビーでは、100キロを超える巨漢にも、160センチ程度の小兵にも、190センチをこえるのっぽにも、足が遅くても、さほどパワーがなくても、それぞれに特技や長所を活かせるポジションやプレーが必ずある。個性が異なる15人が、1つのチームをつくる。ラグビーが多様性のスポーツと呼ばれるゆえんである。

たとえば、俊足を活かしてトライを奪う役割のウィングの選手がスクラムの最前列に置かれても力を発揮できない。同じように、スクラムを柱となるプロップの選手はパワーを持つが、ラインアウトで空中でボールを奪い合うジャンパーや、最後にパスを受けてトライを決めるフィニッシャーには不向きである。

自分にはない個性を持ち、異なる役割を果たしてくれる仲間がいるから、チームとして戦える。加えてラグビーをプレーするには、最低でも15人の相手とレフリーが必要だ。チームメイトだけではなく、戦ってくれる相手や笛を吹くレフリーを「尊重」しなければ、試合が成立しない。

高校や大学のラグビー部で、「ラグビー憲章」をいちから教わるわけではないが、経験者はラグビーをプレーしていくなかで、5つの価値を体験的に理解し、身につけていく。だからこそ、試合後、ひんぱんに健闘をたたえ合うシーンを目にできる。ゲームが激しければ激しいほど、相手のプレーを心からたたえる選手たち姿が胸に響くのだ。

一生に一度ともいわれるラグビーW杯日本大会。プレーだけではなく、ラグビーというスポーツが、歴史とともに培ってきた文化にも注目してほしい。(文◎山川徹)

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