パソコンがなかった時代の仕事のやり方とは “カタカタ”が苦手な上司は音読 情報共有は「会う」ことだった|中川淳一郎

「今日は本当に大事な仕事のプレゼンをさせていただきます。ここまで大事な仕事の場合、重要なのは企画者である私の“思い”を皆さんにビシッとお伝えすることです。そんな時に企画書なんてものがあったら邪魔です。私の目を見ていただき、プレゼンをお聞きください」

完全なハッタリなのだが、この迫力もあってか、S氏はプレゼンに勝ってしまった! 結局役員にまで上り詰める人物だったのだが、昭和の仕事ってもんは妙にダイナミックだったんだな、と思うのである。

これがPCがない時代の仕事のやり方の一つではあるが、平成の後半の10年ほどでも大きく変わったことがある。それは大容量オンラインストレージが普及した結果、広告や雑誌のデータや画像をふんだんに使った企画書や資料をMOに保存し、それをバイク便に出す必要がなくなったことである。

というか「MO」って何? とさえ若者からは言われそうだが、MOとは「フロッピーディスクの大容量版」というのが我々の認識である。しかし、若者からすれば「フロッピーディスクって何ですか?」と思うことだろう。WordやExcelの左上の部分になんだか四角いアイコンがある。これがフロッピーだ。

中年以降にとってはこの四角いアイコンこそ「保存」を意味するのだが、若者にはサッパリ意味不明かもしれない。そろそろマイクロソフト社はこのアイコンを変えてみてはいかがか。(文◎中川淳一郎 連載『俺の平成史』)

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