パソコンがなかった時代の仕事のやり方とは “カタカタ”が苦手な上司は音読 情報共有は「会う」ことだった|中川淳一郎

まず、PCのことを「カタカタ」「ピコピコ」と呼ぶ人がいたのである。「カタカタ」とはキーボードを打つ音のことで、「ピコピコ」は「電子的な何か」を意味する。PCに慣れていない50代社員が「オレはさぁ、カタカタが苦手なんだよ~。参ったな。この“添付ファイル”ってのはどうやって開くの?」といった感じでこの言葉を使っていた。

私は高校時代、アメリカで「タイプライティング」「ワードプロセッシング」という秘書向けの授業を受講していた関係で、タイピングは速い。大学2年生の時には大学で電子メールを使えるようになったため、PCには慣れていた。卒論もワープロ(これも懐かしいですね)かPCのワープロソフトで書くことが必須になっていた。

そのため、新入社員で配属された時、タイピングのスピードに周囲の人々が仰天し「まるで鳩がはばたいているようだ」と言われ、自分の父親と同年齢(52歳)の管理部部長の代わりにメールを打つこともあった。

「中川、こっち来て」と言われ、「オレが打つと20分ぐらいかかるからお前、音読するからメール書いて」と言われ、彼の椅子に座る。彼は後ろに立ち、

「お疲れ様です 今月の発注書の締め切りはいつも通り20日ですが、最近遅れが目立っております。協力機関に対してご迷惑をおかけしたくないため、期日の厳守をお願いします。できれば、20日の当日ではなく、余裕をもって数日前から作業をしてください」と喋る。

これを私が打っていくのである。とまぁ、こんな状態だったから、PCに対するアレルギー反応を持つ人も意外と多かった。自分にとっては書類を作るのにPCを使わないという感覚がよく分からないので、「なんでこんなもんが苦手なの?」と思い、当時中高年社員にPCがなかった時代の話を聞いてみた。箇条書きにしてみる。

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