なぜ元農林水産事務次官の熊沢英昭被告は保釈されたのか 実刑判決後でも保釈できる? 東京高裁が下した判断とは

仕方がなかった殺人?

先日、新幹線内で3名を殺傷した被告に無期懲役の判決がくだされました。あり得ないことですが、もし彼が今、保釈という形で社会に出てきたら何が起きるでしょうか? おぞましい私刑が起きる可能性があります。

殺人犯に保釈が認められないことには合理性もあるのです。「勾留は人権の侵害」と先ほどは述べましたが、「被告人の人権を守るための勾留」というのもあります。

しかし熊沢被告は保釈を認められました。世論が彼の犯行を「仕方ない」と許しているような風潮が一部にあるのも、保釈が認められた一因になった気がしてなりません。

たとえどんな事情があったにせよ、熊沢被告が人1人のかけがえのない命を奪ったことには変わりないはずです。

この事件についてネットで調べてみるとかなり過激な調子で被害者である英一郎さんを批難するような言葉さえ出てきます。

殺されても仕方がない人間などこの世界には1人もいません。熊沢被告のおかれていた状況も想うと心が苦しくはなりますが、それでも殺人という罪は強く責められるべきです。

 

今回の保釈の決定は人権という観点からは歓迎すべきだとは思います。しかし、どこか釈然としないものも残ります。(取材・文◎鈴木孔明)

 

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