アントニオ猪木に学ぶ「アイドルが売れる理由」 眉村ちあきはいかにしてブレイクしたのか|吉田豪

さらに『猪木伝説の真相』(宝島社)という本に掲載された猪木インタビューでは、88年4月22日、新日本プロレスの沖縄大会控室で、藤波辰爾が猪木に世代交代を迫りながら自ら前髪をハサミで切って覚悟をアピールしたものの、滑舌の悪さと前髪をほとんど切ってない思い切りの悪さばかりがいまでも語り継がれることとなった「飛龍革命」について、こう語っていたわけです。

「あれもね、要するにこのくらい切るのか、どうやって切るのかっていうのが彼のセンスかどうかで……腹をくくるってところをどれだけ見せられるか。髪の毛を切るといったって、切り方があるよっていう。どう切ればいいのか、どこまで切ればいいのか。そこは教えてどうこうではない。だって自分で腹が立って髪の毛を切ったわけだから。他人が教えるもんではないでしょう、それは」

猪木は「よくシナリオがあってどうのこうのっていわれるわけでしょ。どんなものだってシナリオはあるだろうけど、そんな見え透いたシナリオじゃ面白くないだろう? ってだけの話」とも語っていて、シナリオの存在を前提として昔よりも踏み込んで話すようになった結果、やってることが藤波へのダメ出しなのが笑いました!(文◎吉田豪 連載『ボクがこれをRTした理由』)

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