「サングラスのおじちゃん…」 横山ゆかりちゃん失踪事件を未解決にしてはいけない!(1)
「男はゆかりちゃんの行動を追い、観察しながら、注意深くゆかりちゃんの両親の座る位置を確認したものと思われます」(捜査本部)
午後1時33分、ゆかりちゃんは入り口近くの北西側の長椅子に腰かけた。
午後1時35分、男もゆかりちゃんの右隣に座った。男は左手でタバコを吸い、ゆかりちゃんの前の灰皿にタバコの灰を落としていた。
「この時、ゆかりちゃんは退屈した時に子供がよくするように、椅子の上で身体を揺らして、遊んでいました」(捜査本部)
しばらくすると、男はゆかりちゃんに話しかけてきた。そして、右手で3回、店外を指さした。まるで何かに誘っているかのようだった。ゆかりちゃんは、ワンピースの裾を両手で持って、十数回ヒラヒラさせていた。人見知りしているような感じではなかった。
午後1時42分、男はゆかりちゃんを長椅子に残して席を立ち、外へ出ていった。ゆかりちゃんは、母親の元を訪れた後、再び長椅子に座り、男が出ていったのと同じ北西角の出入り口から外に出ていった。午後1時45分のことである。
ビデオから解析した男の顔の特徴
「ゆかりちゃんが最後に長椅子に座っているときに、男が外から誘い出した可能性は高いですね」(捜査本部)
ゆかりちゃんが母親に話した「……おじちゃん……」とは、このサングラスをかけた黒服の男にほぼ間違いない。そして、ゆかりちゃんが出ていく直後まで男と会話しており、まるで男に誘われるかのように屋外に出ていったことから、犯行に重大な関係があると思われた。いや、おそらくはこの男こそ、犯人である「あなた」ではないだろうか。
少なくとも、事故ではないことは確かなようだ。これは明らかに「あなた」の邪悪な意思によって引き起こされた「事件」なのである。
その後、防犯ビデオの映像をもとに、警察庁科学警察研究所と大手ビデオメーカー三社で男の横顔の画像を解析した。その結果、次の三つの特徴が判明した。
1 鼻が極めて高い
2 あごが出ている
3 頬骨が高い
年齢は20~50代であるものと見られている。防犯ビデオは繰り返し使用されていた旧式製品であるうえ、画面を四分割して使用しているものだったことから、これ以上詳細なことは分からなかった。
果たして、「あなた」の容姿は上記の特徴に当てはまるだろうか。この男のビデオは、事件発生から1ヶ月経ってから、ようやく公開されたのだ。
公開された犯人と思われる人物
捜査本部の置かれている太田警察署を訪ねた時のことである。私の目の前に、ゆかりちゃん事件に関して、これまで広報された書類の束が置かれたのであるが、その厚さたるや、まるで電話帳のごとき分厚いものだった。 事件発生以来、経た年月の長さと捜査の苦労を物語っていた。その捜査本部でこんな話を聞いた。
「太田市を中心とする東毛地方は、群馬県内でも最も犯罪発生件数が多いところなんだ」
残念ながら、その統計的数字はないというが、窃盗やコンビニ荒らし、傷害などほぼあらゆる分野で「東毛地方は犯罪発生件数が多い」というのが群馬県内の「常識」となっているようなのだ。いったいなぜなのだろうか。<以下次号に続く>
(文◎石川清 「ダークサイドJAPAN 2000年10月号」より加筆)