自称天才編集者・箕輪厚介氏のセクハラ・パワハラメッセージを解読 女性ライターは必死に抵抗していた|能町みね子

おそらくAさんは、箕輪氏のことを当初編集者として尊敬していたはずだ。そして、大きな仕事をもらい、途中までは成果をほめられてもいたため、当然「仕事での関係を切られたくない」という強い気持ちがあっただろう。彼女が箕輪氏の口調や態度に行きすぎた親密さを感じていたとしても、それで仕事がうまくいっているならある程度は受け入れるだろうし、尊敬している以上、自らその雰囲気に合わせることは自然である。

だから、そこから箕輪氏の好意がグラデーションを描いて濃くなり、明らかに恋愛・性愛じみた関係を求めてきたとき、拒絶したくても「やめてください」「そういう関係じゃない」「好意はありません」などの強い言葉ではねつけることは通常以上にしづらい状況にある。ここまで仕事を積み上げてきたのだから、ここで彼の機嫌を損ね、関係を切られることがあってはならないという危機感があるうえに、「尊敬すべき人のはずだから、彼の行動は悪いことではないのではないか」という逡巡の気持ちも芽生えてしまうはずである(広河隆一事件はまさにこのパターン)。

 

参考記事:起業後最大の危機か 幻冬舎・見城徹氏の発言に日本を代表する作家たちが反論 謝罪するも論点ずらしと指摘 | TABLO

 

必死にバランスを取りながら箕輪との肉体関係を拒否する女性ライター

以下は、実際に文春オンラインに載ったメッセージとその心理を、私が勝手に推測したものである。Aさんは一貫して「重要な仕事相手である箕輪氏の気持ちを少しでも損ねてはいけない」「しかし、彼が関係を求めてくることだけは絶対に拒否したい」というバランスを必死で取りながら返信をしている。一連のメッセージにAさんの瑕疵など一切ないことを、私なりに説明してみたい(Aさんがこのメッセージを公開した勇気に甘えて丁寧になぞる形になるため、フラッシュバック的な意味で気分を損ねる方もいるかもしれず、その点については申し訳ありません)。

なお、文春オンラインは、画面のスクリーンショットで会話が載っている部分と活字のみの部分が混在し、途中のメッセージが不明の箇所もあるため、会話を部分的に略していることはおことわりしておく。

箕輪「明日Aちゃんち行きたい。家じゃなくてもいいし、何時でもいいから!」

A「遊んでください(顔文字)」(略)「他の予定は仕事優先で断ってたんですが、みのちゃんとお話なら、感覚を研ぎ澄ませられそうだから!」

箕輪(略)「屋内の部屋みたいな場所でも大丈夫?」

A「www」「カフェみたいな場所で、お茶みたいなもの飲みたいです。」「ご飯屋さんみたいな場所で、ご飯みたいなもの食べるとか。」

Aさんは、断りの態度を見せないよう気を遣っている。会うことは了承し、むしろこちらも積極的に会いたい、と共感を示すようにしつつ、文中で家に来ることだけは一貫して了承していない。会う場所をAさんがごまかして返信したにもかかわらず、「屋内の部屋」を再び提案しはじめた箕輪氏を苦笑で受け流し、とにかく彼女は家以外の場所で会おうとしている。この時点で当然、Aさんはかなり警戒している。

箕輪「お茶はもういっぱい飲んだし、お腹もいっぱい。」「絶対変なことしないから!」

A「あ!それ!」「風俗で培った、なし崩しの技ですね!」

箕輪氏が完全に家に来る気でいるため、「風俗」という露骨な下ネタを持ち出し、相手のはやる気持ちをどうにか萎えさせようとしている(男尊女卑男性は「清楚信仰」が強いため、Aさんは露骨な下ネタでなるべく雰囲気を台無しにしようとしている)。やはり部屋に来ることは了承していない。

箕輪「Aちゃん、ほんとお願い。技とかじゃなくて、ただゆっくりしたいだけ!」

A「私が変なことしちゃうんで!!だめです!wこの年になってヤリマンとか、自分で自分が好きじゃなくなります笑」

ここでAさんが自分を下げているのをそのままの意味で取るのはあまりにも浅薄であると思う。箕輪は「ゆっくりしたいだけ」であるわけがなく、一貫して関係を持つつもりである。しかし、ここでそんな彼の欲望を露骨に指摘して拒めば、彼の気を損ねてしまう。Aさんはここで、自分を押し下げ、「箕輪さんが『ゆっくりしたいだけ』であることは信じます。でも、<私が>ヤリたくなっちゃうから、そしたら自己嫌悪になるから、<箕輪さんが悪いわけじゃないんだけど>来ないでください」と言っているのである。相手を下げないために、自分を「ヤリマン」だと言い張り下品に見せてまで、本当に断りたいのである。屈辱的だったろうと思う。

箕輪「お城みたいなとこあったからそこ行こう!あとは入ってから、話そう」「なんか色々遊べるし、DVDとか見れるし!」「お願いします。心から優しくします。」

A「優しくしてください!」「カフェで。」