「嘱託殺人」の結末 彼女の首を絞めている内に音が聞こえなくなり… “添い寝”店で出会った二人に訪れた別れのとき|裁判傍聴

惹かれ合った二人

「自分にとってすごく大切な存在の女性なので、死んでほしくなんかないです。なんでこんなことしちゃったんだろう…」

二人の出会いは事件の数ヶ月前、客とキャストが話したり添い寝をするいわゆるリフレ店で働いていた美和の元に、彼女が客として来店したのがきっかけでした。

初めて会った時から意気投合した二人はやがて店の外でも会うようになりました。そして、親密さは増していき、だんだん二人は他の誰にも言えなかったことを共有していくようになりました。

彼女は以前働いていた職場で男性の同僚からひどいパワハラを受けていました。大声で怒鳴られるのは日常茶飯事、仕事で使う包丁を投げつけられたこともありました。それ以来、男性と大きい音や声に恐怖を感じるようになりました。

美和は、裁判では詳細は明かされませんでしたが家庭内で大きなトラブルを抱えていました。

「美和はいつも情緒不安定で、そんな姿が自分と重なりました」

生きていく中で、境遇こそ違いますが二人は多くの傷を受けてきました。傷ついた者同士だったからこそ二人は惹かれあったのかもしれません。二人の傷は二人を繋ぐ絆になりました。しかしその絆は二人の人生を良い方向に導くものではなく、逆に二人を堕とすだけのものになりました。

「だんだん会うたびに美和が『死にたい』とか『もう疲れちゃった』ともらすようになっていきました。聞くたびに励ましてましたが、何度も続くと自分も落ち込むようになって…。二人で会うことはマイナスにしかならないと思ったので何度も『離れたい』と伝えましたが、『離れるくらいなら死んでやる』と言われてしまって、離れられませんでした」